今回の宅建士になるための過去問解説は「媒介契約・代理契約に関する規制」についてです。
宅建業者と代理や媒介を依頼された者との間で、契約関係と宅建業者の責任の所在を明確化するため設けられた規制について学習します。
ここで平成29年度の過去問題です。
問題43
宅地建物取引業者Aが、BからB所有の中古マンションの売却の依頼を受け、Bと専任媒介契約(専属専任媒介契約ではない)を締結した場合
Aは、当該専任媒介契約の締結の日から7日(ただし、Aの休業日は含まない。)以内に所定の事項を指定流通機構に登録しなければならず、また、法第50条の6に規定する登録を証する書面を遅滞なくBに提示しなければならない。
正しいか誤りか?
毎年宅建士試験に出題される最重要の項目なので、絶対に点の取りこぼしが無いように覚えましょう!
Contents
媒介契約とは(業者間取引にも適用)
法令を見ていく方が説明しやすいので、以下、法令の引用になります。
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約をしたときは、遅滞なく、必要事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければなりません。
宅建建物取引士業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を模索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない(5項)。
前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第50条の6に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない(6項)
前項の宅地建物取引業者は、第5項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
規約に違反する特約は、無効となります。
【違反した場合】
監督 | ・交付義務に違反 ➡ 業務停止処分 (根拠の明示義務違反のときも同様)、免許取り消し・記名押印義務等に違反 ➡ 指示処分 |
---|---|
罰則 |
なし |
媒介契約の意義・適用範囲
宅建業者の取引には、2つの方法があります。
1)自己の物件を取引する方法
2)他人の依頼に基づいて取引する方法
2)の場合は、依頼者との口約束では後日トラブルが発生する可能性もあるので、依頼内容については書面化が義務づけられています。
媒介契約に関する規制は、代理契約(宅建業者に対し、宅地建物の売買・交換の代理を依頼する契約)にも準用されます。
【適用が無い場合】
貸借の媒介・代理契約には適用はありません。
媒介契約の類型
媒介契約には、「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の2つがあります。
・一般媒介契約 : 他の宅地建物取引業者に重ねて媒体を依頼することが認められる契約
・専任媒介契約 : 他の宅地建物取引業者に重ねて媒介を依頼することを禁止する契約
媒介契約書面(媒介契約書)の記載事項
宅地建物の売買または交換の媒介契約を締結した場合は、下記の事項の記載が必ず必要です。
1) 宅地・建物を特定するために必要な表示(所在・面積等)
2) 宅地・建物を売買すべき価格・評価額
3) 媒介契約の類型(一般・専任等の区別)
4) 既存建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項(平成28年改正法)
5) 媒介契約の有効期限・解除に関する事項
6) 指定流通機構への登録に関する事項
7) 報酬に関する事項(報酬、支払時期等)
2)の価格や評価額について宅地建物取引業者が意見を述べる際には、その根拠を明らかにする必要があります。
専任媒介契約特有の規制
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
意義 |
専任媒介契約のうち、自己発見 取引禁止の特約が付されない契約 |
専任媒介契約のうち、自己発見 取引禁止の特約が付された契約 |
契約の相手方の探索方法 (登録機関) (則15条の10) |
指定流通機構に物件登録 ―媒介契約締結日から7日以内 (休業日を含まない)
|
指定流通機構に物件登録 ―媒介契約締結日から5日以内 (休業日を含まない) |
業務処理状況 の報告義務
|
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
【有効期間】
3カ月以内。これより長い期間を定めたときは、3カ月に短縮される。
また、依頼者の申出により更新することができるが、更新の時から3カ月を超えることはできない。
専任媒介契約の有効期限の例
専任媒介契約(専属専任媒介契約を含む)の有効期限は3カ月以内とされます。
もし、4カ月にした場合は、契約が無効になるのではなく、3カ月に短縮されます。
有効期限を2カ月にした場合は、3カ月の範囲内なので有効になります。
期限を定めないときは、3カ月となります。
媒介契約の規制は賃貸の媒介に及ぶか?
媒介契約の規制は、「宅地建物の売買・交換の媒介(仲介)」に限られます。
よって賃借の媒介を依頼された宅建業者が、賃貸借の媒介契約成立後に媒介契約書面を作成・交付しなくても違反にはなりません。
ただし、媒介・代理によって賃貸借契約が成立した場合は、法37条に規定する書面の交付義務があります
媒介契約書面の作成時期と交付方法
作成時期 |
媒介契約を締結したときに、遅滞なく、作成することを要する。
|
---|---|
交付方法 |
宅地建物取引業者が、書面に記名押印し、依頼者に交付することを要する。 |
媒介契約書面の記載事項の注意点
建物状況調査の建物は、建物の構造耐火上主要な部分及び建物の雨水の侵入を防止する部分を指します。
報酬に関する事項を定め、これを書面に記載しなければならない。(この点、37条書面と異なる)。
専任媒介契約の場合の依頼者が他の業者の媒介・代理により契約を成立されたときの措置を、それぞれの書面に記載しなければならない。
媒介契約書面への記名押印は宅建士である必要はなく、宅建業者が行います。
媒介契約書面と標準媒介契約約款
媒介契約書面は、国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づく必要はないです。
しかし、標準媒介契約約款に基づかないときは、その旨を記載しなければなりません。
媒介契約における業務処理報告の方法
媒介契約を締結した宅建業者は、当該媒介契約の目的物である宅地・建物の売買・交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼に報告する。
専任媒介契約の有効期限の更新
依頼者の申出によってのみ更新することができます。
宅建業者の申出によっては更新することができません。
したがって「依頼者の申出がないと自動更新される特約」は無効です。
専属専任媒介契約の「自己発見取引禁止の特約」とは
依頼者が、媒介を依頼した宅建業者が探索した相手以外の者(自らが発見した相手方)と売買または交換の契約を締結することができない特約。
これに違反して契約をした場合は、当該宅建業者に違約金を支払うこととするものである。
「指定流通機構」(レインズ)とは
国土交通大臣の指定を受けて、専任媒介契約等の対象物件の登録業務等を行う者をいう。
過去問の解説:媒介契約・代理契約に関する規制
媒介契約と代理契約の規制については、いかがでしたか?
序文の過去問の解説です。
問題43 (3)誤り
宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結した日から7日(休業日は含まない)以内に指定流通機構の登録しなければならない。
登録した宅地建物取引業者は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
提示ではなく、引き渡しが必要である(同法34条の2第5項・6項)。
(参照:【平成29年 問43項3】過去問解説より)
また、専任媒介契約の有効期間は、3ヶ月を超えることができず、自動更新もできないです。
宅建暗記ポイント「媒介契約・代理契約に関する規制」
・媒介契約の規制は、売買・交換の媒介契約に適用され、賃借の媒介契約には適用されない。
・媒介契約書面には、①物件の特定表示、②売買すべき価格、③類型、④(既存建物)建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項、⑤有効期限、⑥指定流通機構への登録、⑦報酬等を記載
・宅建業者は、価格については、その根拠を明示しなければならない(口頭でもよい)
・専任媒介契約においては、一般媒介契約と異なり、①有効期限(3カ月以内)、②業務処理状況の報告義務(専任―2週間に1回以上、専属専任―1週間に1回以上)、③指定流通機構への登録義務(専任―7日以内、専属専任―5日以内)等の制限あり
比較表にすると覚えやすいです。
* 参考記事:間違えやすい比較のまとめ【媒介契約の比較】