宅建と民法:黒革の手帳の手付金や解約の契約は違法?

テスト

この宅建と民法では、難解な権利関係の問題を解きやすくするために身近な事例に置き換えて解説しています。

不動産の売買契約が出てくるドラマでは、米倉涼子や武井咲など人気女優が演じた「黒革の手帖」が有名です。

作家・松本清張の原作「黒革の手帖」は、元銀行員の女性が、勤務先の銀行から横領したお金を元手に銀座で夜のクラブを開業します。

銀行の勤務時代に脱税をするなど訳あり顧客リストを黒革の手帳に書き留め、その手帳を使って夜の世界で、のし上がっていく話です。

そんな順調にすすんでいた主人公の転落のきっかけが、無理して手に入れようとした店の売買契約です。

どうしても主人公が欲しい店が売り出されて、手元に十分な資金がないのに2軒目の店も手に入れようとします。

不動産売買の契約シーン

長谷川(売主)が契約を破棄したら全額返金するが、元子(買主)が契約破棄したら倍の8,000万円を支払う約束で、元子は手付金を払い、契約を済ませた。

(参照「ドラマ黒革の手帳」より)

しかし、主人公の元子は、この支払いの残金4,000万が用意できずに8,000万円の借金が出来ます。

そして、この契約破棄のペナルティーから、自分の店も借金のカタに取られ、最後は手放す事になり転落します。

この売買契約は最初から元子をはめようと、ヤクザや彼女に恨みがある元銀行の上司達が用意した罠でした。

ここで宅建士の試験問題に出てくる「手付金や解約の契約」に置き換えて考えてみましょう。

買い手が残金が用意できないと厳しいペナルティーがある「手付金」契約は、現実の不動産売買でもあり得る事なのでしょうか?

その救済措置は? 続きは本文で、、、

宅建士の過去問解説:民法の契約を黒革の手帳で学ぶ

買手に不利な手付金契約は存在するのか?

黒革の手帖の物件契約は、買手が残金を支払えない場合は、倍に支払うという随分、買手側に不利な厳しい契約です。

現実に買手に厳しいペナルティーがある「手付金」契約は、存在するでしょうか?

手付金の種類

手付には「証約手付」、「解約手付」と「違約手付」の3つがあります。

「証約手付」とは、売買契約の成立を証明するために交付される手付のことです。

不動産の売買契約では、交渉が成立するまでに様々な段階があります。

その時点ごとに成立する契約を明確するするために結ばれる場合が多いです。

「解約手付」とは、日本の不動産業界で一般的に交わされる契約です。

この「解約手付」では、買主が支払い代金の一部として内金を支払うことです。

物件の引き渡しや登記の準備を始めるタイミングに交わされます。

履行前であれば、買主は手付金を放棄することで契約を解除できます。

もし売主側が解除しようとすれば、手付金の倍の金額を支払う(倍返し)することで解除ができます。

そして契約を違約した場合は、ペナルティーがある「違約手付」があります。

これは履行確保のために損害賠償がある厳しい契約です。

この「違約手付」の契約は、通常の不動産取引では、ほとんど行われません。

黒革の手帳の元子のように残金が払えない場合は、倍返しするような契約は「違約手付」の一種でしょうか?

宅建の実務で買主に不利な手付金契約は禁止

通常の不動産売買では「解約手付」契約しか結ばれません。

宅建実務で通常取引を行う場合は、買主に不利特約手付金の契約は基本的に禁止されています。

宅建試験にも出題されていますが、一般的な「手付金」は契約金額の2割以内にするように定められています。

破棄になった場合の損害賠償契約金額2割以内です。

また、破棄した場合でも買主側が倍返しする必要はありません。

仮に双方の同意があったとしても、買主が倍返しするような不利な契約は有効にならないです。

宅建試験にほぼ毎年出る知識ですが、売主が宅建業者で買主が一般消費者の場合は、買主への保護が手厚いです。

手付金の額が、1,000万円を超える場合や取引額の5%工事完了10%工事完了)の場合は、売り手側に手付金の保全措置の義務が生じます。

保全措置とは、銀行や保険機関など第三者に保管させる等の方法で、不測の事態が生じた場合でも手付金を確実に買主に返還できるようにする制度のことです。

日本の民法や宅建業法の基本は、善意の買主(一般消費者)側が不利にならない様に定められているのを忘れないでください。

不利な売買契約をした元子の失敗の原因

「黒革の手帳」の契約時には、不動産業者の立会いはなく、売り手と買手が直接契約を結んでいます。

元子に物件情報を電話で連絡してきたのは、不動産業者のようでしたが、信頼できる業者の元での仲介ではなさそうです。

この段階で、はめられそうな詐欺の匂いがしてきます。

不動産業務に疎い元子の場合は、信頼できる第三者の専門家に契約方法を相談する方が良かったかもしれません。

残金支払いができない場合のペナルティーが厳しい「違約手付」で契約書を交わしてしまったのが最大の過ちです。

最初から一定期間内でならば、契約が自由に解除できる「解約手付」で契約するべきでした。

また、一般的な不動産取引の手付金の額も2割以内なので、それ以上の手付金支払いの義務が生じるならば、契約しないと取引しても良かったです。

店の欲しさに焦って契約したのも間違いでした。

更に解除条件として、予定金額が用意できない場合は、契約は無効になると特約をつければ、賠償から逃れられました。

この条件付きの特約は、住宅の一般的な売買契約でも付けます。

例えばローンが組めない場合は、無条件で契約が解除できるなどです。

こうして置けば、残金が用意できなくても買主は損することはありません。

焦って不利な売買契約をすると最悪の結果になります。

この物語では、悪女で成功するためには、法律の知識も不可欠だとよくわかります。

この黒革の手帖は他にも、「錯誤の契約」など、悪人達?が法律を駆使して主人公をはめるシーンが出てきます。

民法を知らない間は、このカラクリが、よくわかりませんでしたが、少しでも民法がわかってくると意味が理解できるので、物語がもっと面白くなります。

これは、別の記事で詳しくお伝えします。

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