宅建の過去問解説【税・その他】不動産鑑定評価基準

テスト

今回の宅建士になるための過去問対策は「不動産鑑定評価基準」についてです。

不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うにあたって、そのよりどころとすべき基準であり、鑑定評価の基準として活用されているものです。

この基準の分野は、非常に勉強する分量が多いので、試験によく出題される内容だけに絞って勉強するのがよいです。

ここで平成28年度の宅建士試験で出題された過去問題を解いてみましょう。

問題25

4)収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であるが、市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるため、この手法の適用は避けるべきである。

正しいか誤りか?

宅建士試験には主に「不動産鑑定評価の方式」の3つ手法「原価法」、「取引事例比較法」及び「収益還元法」から集中的に出題されています。

本文の解説で確認していきましょう!

宅建の過去問解説【税・その他】不動産鑑定評価基準

本文では、宅建試験の過去問で出題される項目を中心に解説していきます。

不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うにあたって、鑑定評価の基準として活用され、適正な鑑定評価を行うためには準拠すべき規範となるもの。

法的な強制力はない。

不動産の鑑定評価の手順

一般的に不動産鑑定士が下記の手順で行う。

宅建の過去問解説【税・その他】不動産鑑定評価基準

不動産の種別

不動産の用途に関して区別

1)地域の種別:ある一定の地域(用途的地域)を構成。宅地地域農地地域林地地域

2)土地の種別:宅地, 農地,林地, 見込地,移行地等の5つに分けられる。

【試験のポイント】

「土地の種別」は、その土地の属する用途的地域の種別に基づいて判定されるもので、必ずしもその土地の現実の利用方法と一致するものではない

例)現実には耕作で利用されていても、その土地の属する用途的地域が宅地地域であれば、鑑定評価上は宅地とされる。

不動産の類型

不動産の有形的利用権利関係の態様に応じて区分される分類

例)宅地についての類型

更地、建付地、借地権、底地、区分地上権等に分けられる。

価格形成要因(不動産の価格と形成する要因)

価格形成要因とは、不動産の効用及び相対的希少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因。

一般的要因自然的要因(地盤と周囲の環境)、社会的要因(人口、家族構成)、経済的要因(金融財政、雇用)、行政的要因(税制、土地利用)

地域要因:その地域の属する不動産の価格の形成に全体的な影響を与える。

個別的要因:不動産に個別的に形成される要因

想定上の条件について

依頼目的に応じて、価格形成要因のうち地域要因または個別要因について、想定上の条件を設定する場合がある。

その場合の鑑定評価書は、利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点に加え、特に実現性及び合法性の観点から妥当なものでなければならない。

【最有効使用の原則】

不動産の価格に関する諸原則は、需要と供給の原則、変動の原則、代替の原則、最有効使用の原則、予測の原則と様々なものがある。

その中で「最有効使用の原則」が鑑定評価上は重要である。

不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成される。

この場合の最有効使用は、現実の社会情勢を客観的にみて合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。

しかし、全ての事例に当てはまる訳ではない。

不動産の価格の判定の基準日

不動産の鑑定評価を行うにあたっては、価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点という。

借地借家法に基づき、賃料の増減が請求される場合における価格時点は、賃料増減請求の係る賃料改定の基準日になる。

不動産の鑑定評価によって求める価格

原則:正常価格

正常価格とは、市場を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で、合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

【特殊な場合】

・限定価格とは、市場が限定される場合の価格

・特定価格とは、市場性を有する不動産の経済価値を適正に表示する価格。
民事再生法など早期売却を前提とした価格、会社更生法、民事再生法に基づく事業の継続を前提。

・特殊価格とは、一般的に市場性を有しない不動産の価格で、その保存等に主眼をおいた鑑定評価(文化財や宗教の建築物)

【試験のポイント】

限定価格とは、開かれた市場における価格ではなく、限定された市場における価格

特定価格とは、市場性を有する不動産について、ある特定の評価目的の下での、正常価格とはやや違った前提で求められる価格と考えるとよい。

不動産鑑定評価の方式

不動産の鑑定評価の方式には、3方式がある。

原価方式(原価法)

比較方式(取引事例比較法)

収益方式(収益還元法)

原価法

建物があれば原価を試算し、試算価格(積算価格)を求める。

【適用方法】

再調達原価とは:対象不動産の価格時点において再調達することを想定した場合に出される適正な原価の総額をいう。

減価修正の対象となる減価の要因には、物理的要因・経済的要因・機能的要因がある。

減価額を求める方法には、耐用年数に基づく方式観察減価法があり、原則としてこれらを併用する。

建築資材、公法等の変遷により再調達原価を求めることが困難な時は、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価(置換原価)を再調達原価とみなす。

取引事例比較法

同じような物件と比較して価格を出すこと。

【有効な場合】

近隣地域または同一需給圏内の類似地域等において、対象不動産と類似の不動産の取引が行なわれている場合

同一需給圏内代替競争不動産の取引が行なわれている場合

(例:戸建住宅地域内のマンション適地の取引)

【適用方法】

取引事例は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格の必要に応じて事情補正及び時点修正を行う。

原則として近隣地域または同一需要給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択する

必要やむを得ない場合には、近隣地域の周辺の地域にある不動産に係るものから。

また、対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には、同一需給圏内代替競争不動産に係るものから選択する。

収益還元法

収益を生むという面から価格を出す。

対象不動産が将来生み出すと期待できる純収益の現在価値の総和を求めることにより、対象不動産の試算価格(収益価格)を求める。

【有効な場合】

賃貸用不動産または賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に、特に有効である。

文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには、基本的にすべて適用すべき(自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用される)ものである。

自宅でも賃貸で貸した場合はこうなると想定して収益還元法が適用できる。

【適応方法】

収益価格を求めるには「直接還元法」と「DCF方式」の2つの方法がある

直接還元法:一期間(一般的に1年)の準収益を還元利回りによって還元する方法

(例)月10万 一年間120万 利回りを出して戻す・

DCF法(Discounted Cash Flow法):連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法。

証券化対象不動産についてはDCF法の適用が必須。(DCFで計算しなければならない)

この場合は、併せて直接還元法を適用することにより検証を行う必要がある。

不動産の賃料を求める方法

不動産の賃料には2種類ある

1)【実質賃料】

賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間にに対応する適正なすべての経済的対価をいう。

純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費から成り立つものである。

2)【支払賃料】

各支払い時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものである。

【賃料の鑑定評価の方法】

賃料の鑑定評価は、1)「実質賃料」を原則とし、必要に応じて2)の「支払賃料」を求めることができる。

証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価

J-REIT」など不動産証券化の進展に伴い、証券化の対象となる不動産の鑑定評価の中に「証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価」の項目が求められている。

個別的要因の調査等

証券化対象不動産の鑑定評価にあたっては、不動産鑑定士は、対象不動産の内覧の実施を含む実施調査を行い、一定事項の確認を行うとともに、原則として、依頼者に対し当該鑑定評価に必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析判断する必要がある。

DCF法の適用等

収益価格を求めるには、DCF方式を適用しなければならず、併せて直接還元法の適用により、検証を行う事が適切である。

【宅建】過去問解説まとめ「不動産鑑定評価基準」

「不動産鑑定評価基準」の分野は幅広い知識が出題されますが、出題される部分は過去問が中心になります。

過去問題「不動産鑑定評価基準」の解説

平成28年度 問題25

4)収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であるが、市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるため、この手法の適用は避けるべきである。

解答:誤り

収益還元法は、市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、この手法が活用されるべきである(同基準総論第7章第1節IV 1意義)。

(参照:【平成28年 問25項4】過去問解説より)

試験に出題されるポイント

1)鑑定評価上の土地の種別は、必ずしもその土地の現実の利用状況と一致するものではない

(例:現況農地 ⇒ 鑑定評価上は宅地)

2)価格形成要因は、一般的要因地域要因個別的要因に分けられる。

3)不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される。

4)不動産の鑑定評価によって求める価格は、原則として正常価格であるが、そのほかに、限定価格・特定価格・特殊価格を求める場合もある。

5)造成や建築の工事が完了してない土地または建物について、一定の要件の下に、これらの工事の完了を前提として鑑定評価を行うこともできる。

6)正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

7)不動産の鑑定評価の方式には、原価方式・比較方式・収益方式があり、価格を求める手法としては、原価法取引事例比較法収益還元法の3手法がある。

8)「原価法」は、対象不動産が土地のみの場合でも、埋立地や造成地などで再調達原価を適切に求め得る場合には適用できる。

9)「取引事例比較法」は、近隣地域または同一需給圏内の類似地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行なわれている場合のほか、同一需給圏内において対象不動産と代替競争関係にある不動産の取引

(例:戸建住宅地域内のマンション適地の取引)が行なわれている場合にも有効な手法。

10)「収益還元法」は、市場性を有しない不動産以外のものについては基本的にすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。

11)収益価格を求める方法には、「直接還元法」と「DCF法」とがある。

12)不動産の賃料には、実質賃料と支払い賃料とがあり、賃料の鑑定評価においては実質賃料を原則とし、必要に応じて実質賃料とともに支払賃料を求めることができる。

また、不動産の賃料を求める手法には、新規賃料を求める手法と継続賃料を求める手法がある。

13)証券化対象不動産の鑑定評価にあたっては、建物の内覧を含む実地調査及びエンジニアリング・レポートの活用が大切。

特に収益価格を求めるにあたってはDCF法を適用し、併せて直接還元法の適用により検証を行うことが適切である。

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