今回の宅建士になるための過去問解説は、前回の「業者自ら売主となる場合の規制(1)」に続き、「8種制限」の2回目です。
業者自らが売主になる場合に適用される「8種制限」を覚えていますか?
この「8種制限」は毎年、宅建士試験に出題される最重要事項なので、絶対に覚えて下さい!
今回は、下記の3つの赤字の項目について解説していきます!
【8種制限】
1)自己の所有に属しない物件の売買の制限
2)クーリング・オフ制度
3)損害賠償額の予定等の制限
4)手付額の制限
5)瑕疵担保責任の特約の制限
6)手付金等の保全
7)割賦販売契約の解除の制限
8)所有権留保等の制限
ここで、平成28年度の宅建士試験の過去問題を解いてみましょう。
問題28
宅地建物取引業者A、自らを売主として、宅地建物取引業者でない Bとの間でマンション(代金4,000万円)の売買契約を締結した場合
問(エ)
Aは、建築工事完了後のマンションの売買契約を締結する際に、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を1,000万とする特約を定めた。
正しいか誤りか?
解説のヒントは本文をみていきましょう!
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Contents
宅建過去問 ―業者自ら売主となる場合の規制(2)
損害賠償額と違約金は、「代金の2割を超えることができない」、「解約手付の種類と特徴」などを整理して覚えてください。
業者自ら売主のなる場合の規制「8種制限」のうち、3つの制限を以下説明します。
損害賠償額の予定等の制限
<業者間取引では適用除外>
損害賠償額の予定は、重要事項説明35条と37条書面の両方に記載する必要があります。
宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをしてはならない(法38条1項)。
前項の規定に反する特約は、代金の額の10分の2を超える部分について、無効とする(2項)。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
債務者が予想外の多額の損害賠償を支払う事態にならないように、また買主の利益を保護のために、損害賠償額は、代金の2割を超えることはできません。
損害賠償額と違約金の定めは同時にできるか?
両方を定めることはできる。
それぞれが代金の2割ではなく、合算して代金の2割を超えることができない。
代金の額の2割を超える定めをした場合?
その契約自体が全部無効になるわけではない。
2割を超える部分が無効になり、予定額は代金の2割となる。
手付の額の制限等
<業者間取引では適用除外>
宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者は、その倍額を償還して、契約の解除をすることができる(2項)。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
基本、買主に不利な手付金の特約は無効になる。
契約の履行の着手とみなされるのは?
1)売主側の場合
・売主が仮登記をさせたとき
・売主が移転登記に必要な書類を完備し、買主に契約の履行を促したとき
2)買主側の場合
・買主が代金を用意して、売主に所有権移転登記・物件の引き渡し等を求めたとき・買主が内金、中間金を支払ったとき
解約手付の種類と特徴
手付には3種類あります。
・証約手付
・違約手付
・解約手付
解約手付とは、当事者の一方に債務不履行がなくても、または当事者間に解除についての合意がなくても、交付された手付を理由に契約を解除できるもの。
当事者は自分が履行に着手していても、相手方が履行に着手する前であれば、契約を解除することができる。
【契約の解除】
「手付流し」:手付を交付した者が、手付を放棄すること。
「手付倍返し」:手付を受領した者は手付の倍額を償還すること
当事者間で違約手付として受領された手付はどうなるか?
手付が解約手付となるか違約手付になるかは当事者間の合意によって定まる。
宅建業者が自ら売主として受領する手付は、すべて解約手付の性格を有する。
買主は違約手付として合意しても、売主が契約の履行に着手するまでは、手付金を放棄して売買契約を解除することができる。
瑕疵担保責任についての特約の制限
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、
民法570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、
同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない(法40条1項)
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
*瑕疵担保責任とは、
売買のときから隠れた瑕疵(通常要求される程度の注意を持っても発見できない瑕疵)がある場合、売主が無過失であっても責任を負うこと。
契約の解除と損害賠償の請求ができる期間
・瑕疵を発見してから1年以内
・宅建業法では「物件引き渡しの日から2年以上」
ただし、上記は、売主が事業者であって、買主が一般消費者の場合だけに適用されます。
「瑕疵担保責任を負わない」特約は無効で、その場合は民法の規定に従うものとなります。
宅地・建物の売買において、売主が宅建業者であって、買主が宅建業者ではない場合、瑕疵担保責任の期間を「引渡しの日から2年未満」とする特約は無効になります。
売主・買主ともに宅建業者の場合、「瑕疵担保責任を負わない」との特約は有効
悪意(売主が瑕疵を知っていた)場合は特約は無効
「瑕疵担保責任を負わない」との特約は、基本的には、有効です。
しかし、売主が隠れた瑕疵の存在を知りながら、その事実を買主に告げなかった場合、特約は無効とされます。
民法の規定よりも不利な特約をした場合
特約をおかなくても違法とはならないが、民法の規定よりも不利な特約をした時は無効となる。
いずれも民法の規定が適用される。
過去問解説「業者自ら売主となる場合の規制(2)」
「8種制限」のうち3つの解説は、理解できましたか?
序文の解答です。
エ 違反する。
当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を代金の2割(本肢の場合は800万円)を超えて定めることはできない(同法38条1項)。
(参照:【平成28年 問28項エ】過去問解説より)
損害賠償や違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金額の10分の2を超えてはいけなかったですよね。
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最後に宅建試験で、覚えておきたい暗記のポイントです!
宅建試験のポイント
1)宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、損害賠償額または違約金の合計額が代金の2/10を超えてはならない。
2)損害賠償予定額を、特約で代金の額の2/10を超える額を定めたときは、2/10を超える部分が無効となる。
3)宅建業者が自らを売主として受領する手付は、すべて解約手付とされ、代金の2/10を超えて受領できず、2/10を超える部分は無効となる。
4)手付を理由に契約が解除できるのは、相手方が「契約の履行に着手するまでの間」である。
5)瑕疵担保責任の期間に関する特約を除いて、民法の原則よりも買主に不利な特約は無効となる。
6)瑕疵担保責任の期間を、物件を引き渡してから2年以上とする旨の特約は有効となるが、これより期間が短い特約は無効となり、自動的に民法の原則(瑕疵を知った時から1年以内)が適用される。
次の「業者自ら売主となる場合の規制(3)」は「手付金の保全」について解説していきます。
これも最重要の暗記事項なのでお見逃しなく!