前回の「不動産登記2」に引き続き、今回の宅建士になるための権利関係の過去問解説は「不動産登記」の3回目です。
前回の不動産の登記手続きを覚えていますか?
* 前回の記事 「宅建士になるための過去問解説【権利関係】不動産登記2。不動産の登記手続きでおさえるべきことは?」
ここで、平成27年度の宅建士試験で出題された登記簿の閲覧についてです。
・登記事項証明書は、利害関係を明らかにしないと閲覧することができない?
・登記事項証明書の交付の請求の請求方法は?
本文で解答のヒントを探してください。
今回は、所有権移転登記、相続や買戻特約の仮登記など様々な登記について、過去に出題された分野を中心に解説します。
ぜひ、最後の試験のポイントまで読んでみてください!
宅建過去問解説:建物に関する登記
区分建物(マンションなど)の登記、仮登記などをみていきます。
合併と合体の違い
建物の登記には、合併と合体の2種類があります。
建物の合併
合併建物には物理的な変更が加えることなく
登記簿上で1個の建物にすること
所有者の意思が必要、申請義務はない
建物の合体
数個の建物が増築等の工事により構造上は1個の建物になる
所有権を異にしても合体ができる
所有者の意思は不要
所有権の登記のない建物であっても、合体の登記をすることができる。
合併と合体の違いの理由
不動産の物理的現状は、登記簿上明らかにする必要性があります。
よって合体の場合は、絶対に申請の義務あり、 滅失の登記をしなければなりません。
区分建物に関する登記表題登記の特徴
・原始取得者(ディペロッパー、売主など)が申請し、表題部の登記をする必要があり
買主等が表題の登記を申請する義務はない 区分建物の場合
一棟の建物の表題部の登記 → 各専有者の表題部登記
戸建とマンションの表題登記の違い
戸建の場合は、原始取得者でない次の所有者(買主)でも表題登記ができますが、
区分建物(マンション)は、原始取得者でないと、表題登記はできない違いがあります。
区分建物の床面積の表示方法
登記の面積は、実物の部屋の大きさ内法寸法で表示されます。
よって区分建物の床面積は、内法寸法(壁の内側)で算出されます。
通常、不動産の広告では、壁芯で面積が表示されます。
よって広告で出ている面積よりも、実物の部屋は狭く感じる場合が多いです。
敷地権の登記が必要
区分建物では必ず「敷地権」の表記はされ、登記官が職権で敷地権の登記ができます。
所有権の移転登記は、基本は2人(登記権利者と登記義務者)の共同でしないとできません。
原則として権利部の保存登記ができる人
原則(区分建物を除く)と下記の人が保存行為ができます。
・表題部の所有者
・表題部所有者の相続人
共同名義で相続する場合、共同相続人の1人は、自己の持分のみの所有権保存の登記を申請することができない。
しかし、保存行為として全員のために、単独で全員名義の所有権保存の登記の申請をすることはできます。
区分所有の保存登記
区分所有(マンションなど)の保存登記の場合は、購入者は、甲区以降は自分で登記を行います。
これは、単独申請(自分一人で作成できる)保存登記で、権利がはじめて登記されることになります
所有権保存登記とは、甲区を作るために一番、最初にする必要があります。
もし、この所有権の登記ができない場合は、次の乙区(その他の権利)の登記をすることはできません。
所有権移転登記
所有権移転登記とは、
現在の登記記録上の所有者から、所有権を取得した者が、新たに登記記録上の名義を取得するためにする登記である。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
所有権移転登記では、登記権利者と登記義務者の共同で申請するのが原則である
法務局へ申請する(申請と添付の情報)書類
【申請情報】
・登記原因証明情報: (何のために所有権を移転したか?)
・登記識別情報:(または登記済証、昔の権利書にあたる)
・電子署名・電子証明書(登記義務者の印鑑に関する証明書)
・住所証明書:(登記権利者の住所を証明)
・第三者がいたら、許可・同意・承諾を証明する情報
・代理権限証書: (代理人の権限を証明)
登記識別情報には、登記義務者(売主・贈与者等)が署名押印しなければなりません。
登記識別情報を提供できない場合の代替制度
登記識別情報とは、登記義務者が確かに本人であると登記権利者が確認するために提供されます。
しかし、これが提供できない場合は、代わりに代価措置が認められています。
代価措置には2つの方法があります。
a) 事前通知制度
b) 資格者代理人による本人確認情報の提供制度
通常はb)が採用されます。
b)の方法 ・資格者代理人による場合 → 代理権限証書
資格者代理人(司法書士・土地家屋調査士・公証人等)によって、本人性を確認するために必要な情報を申請情報と共に登記所へ提供する方法です。
登記識別情報
英数字で構成され、普段はシールが貼られて見えないですが、登記時は、シールを剥がして見えるようにします。
(参照画像:「東堤エリ事務所」より)
代理権限証明書
代理人による申請のときに必要となります。
・資格者代理人 → 代理権限証書
・法人が申請当事者 → 資格証明書
権利に関する滅失の登記
抵当権の登記を抹消することなく、滅失の登記を申請することができます
抵当権が設定されている場合、建物がなくなれば同様になくなります。
相続に関する登記単独申請
遺贈を登記原因とする場合は、遺贈者と受遺者で共同申請します 。
所有権移転登記と同時申請をする必要があります。
宅建過去問解説:仮登記
仮登記とは、
直ちに本登記をするべき実体的または手続的要件が具備しない場合に、将来において必要な条件が備わった時にする本登記のために、あらかじめ順位を保全しておくための登記である
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
将来生じる権利なので、保全関係ないのに仮登記をするのは認められていません。
仮登記の場合は、共同でも単独申請する場合でも登記識別情報はいらないです。(移転登記の場合は必要)
申請手続きは、共同申請だけでなく、単独でできる場合もあります。
単独で申請する場合は、仮登記義務者(売主)の承諾、また、譲渡が決まっていても書面の提出が必要です。
・登記簿上の利害関係人がいる場合は、承諾を証明する情報が必要です。
(* 利害関係人とは:本登記によって不利益を受ける第三者などです。)
仮登記義務者が協力してくれない場合
裁判所に申請して認めてもらう方法があります。
仮登記義務者が協力せず、仮登記権利者が裁判所を通じて、仮登記を命ずる処分の決定を受け、または判決によって仮登記義務者の意思擬制がされている場合には、その処分、または判決を証する情報を提供して単独で申請ができます。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
仮登記の目的は、後から矛盾する他の登記が出てきても、本登記の段階で「自分が先なので登記は優先される!」と主張できるからです。
意思擬制とは
法的取り扱いにおいては、同一とみなすこと仮登記義務者の同意と裁判所の命令も一緒に扱うことです。
地役権の登記
地役権設定の範囲が曖昧な場合は、図面の添付が必要です。
地役権設定の登記は、承役地及び要役地の双方に所有権の登記がなければすることができません。
承役地と要役地の乙区に登記されます。
宅建士の過去問解説:不動産登記3
登記の内容は、いかがでしたか?
序文の問題「登記事項証明書の交付の請求方法と閲覧の制限はあるか?」
解答はこちらです。
何人も登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という)の交付を請求することができる。利害関係を明らかにする必要はない。
登記事項証明書の交付の請求は、法務大臣の定めるところにより、請求情報を電子情報処理組織を使用して登記所に提供する方法によりすることができる。
(参照:【平成27年 問14項1.3】過去問解説より)
登記制度の目的は、土地や建物の所有者が誰なのかを明確にすることです。
よって不動産登記簿は一般に公開され、誰でも自由に閲覧できます。
宅建過去問まとめ:暗記のポイント
登記申請を整理してみました。
申請の形態
・表示に関する登記 → 単独申請
・権利に関する登記 → 原則、共同申請
(例外:単独申請も可能)
・判決による登記
・相続による登記
・所有権保存登記
・仮登記で一定の要件を満たすもの
・合併による登記
・登記名義人表示変更、更正登記
申請義務
・表示に関する登記 → 一部申請義務あり
・権利に関する登記 → 申請義務なし
職権登記の可否
・表示に関する登記 → 原則、職権登記可
・権利に関する登記 → 原則、職権登記不可
申請情報の作成
1つの不動産ごとに1つの申請情報の作成が原則
例外)同一登記所の管轄区域内にある複数の不動産
・登記の目的
・登記原因及びその日付が同一(解釈上、申請当事者が同一も含む)
上記の状態である場合は、1つの申請情報よって申請することができる
番外編:ミニ知識
宅建士の試験勉強のためだけでなく、今後、不動産購入、相続などのときに登記の知識があれば便利です。
また、不動産を持っている人であれば、正しい登記が行われているかどうか?
『登記事項証明書』をチェックするのもトラブル防止になります。
最近、不動産の所有者の高齢化に伴い、相続登記されないまま残るなどの事例が増えています。
また、登記簿上の名義人は既に他界しているケースが増えています。
このような相続による未登記不動産は、相続人が処分しようとしても所有者の権利が主張できません。
後の家族に大きな負担を残すので、登記はとても重要です。
宅建士試験の為だけに、不動産の知識を身につけるのは、もったいないです。
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