今回の宅建士になるための過去問解説は「建築物の高さ制限」についてです。
前回の記事「容積率・建蔽率等の制限」を行うことで、間接的に高さを制限することになりますが、日照、採光、通風の確保を考えるとそれだけでは不十分です。
よって建築基準法で、絶対高さの制限(低層住宅専用地域等内)、斜線制限(道路・隣地・北側の3種類)や日影規制を定めています。
ここで平成25年度の宅建士試験で出題された「建築物の高さ制限」の問題を解きましょう。
問題18
(3)建築物が第二種中高層住居専用地域及び近隣商業地域にわたって存する場合で、当該建築物の過半が近隣商業地域に存する場合には、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定(北側斜線制限)は適用されない。
正しいか誤りか?
「建築物の高さ制限」はどのエリアにどの規制がされるか、例外は何かを覚えれば解けます。
本文で試験のポイントをおさえていきましょう!
Contents
低層住宅専用地域等内における建築物の絶対高さの制限
下記の住居は建築物の高さ「絶対高さ」が適用される。
・第一種・第二種低層住居専用地域・田園住居地域
10mか12mのうち当該地域に関する都市計画で定められた建築物の高さの限度を超えてはならない。
例外
1)その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物であり、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、建築審査会の同意を得て許可したもの
2)学校その他の建築物
特定行政庁がその用途によってやむ得えないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
斜線制限
斜線制限は、道路境界線または隣地境界線からの距離に応じて建築物の各高さを制限するもの。
「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3種類がある。
「道路斜線制限」
適用区域 |
・すべての用途地域(13地域) ・用途地域の指定のない区域 |
---|---|
制限の内容 | その部分から隣地境界線までの水平距離に1.25または1.5を乗じて得て数値以下 |
【建築物の各部分の高さ】
住居系の用途地域(8地域) | 1.25 |
---|---|
非住居系の用途地域(5地域) | 1.5 |
用途地域の指定のない区域 | 1.25または1.5のうち、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの |
【イメージ図】
(引用画像:行政書士たにぐち事務所より)
* 前面道路の幅員が大きくなるほど、より高い建築物が建ちやすくなる。
隣地斜線制限
適用区域 |
・「第一種・第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」を除く 10種類の用途地域(中高層住居、商業地域など) ・用途地域の指定のない区域 |
---|---|
制限の内容 |
その部分から隣地境界線までの水平距離に (1)「1.25を乗じて得て数値に20mを加えたもの」 |
【イメージ図】
(引用画像:行政書士たにぐち事務所より)
【試験のポイント】
「第一種・第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」内では、建築物の高さ10mまたは12m以下とする絶対高さの制限があるため、隣地斜線制限は適用されない。
絶対高さの方が厳しいからである。
北側斜線制限
適用区域 |
・第一種・第二種低層住居専用地域若しくは田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域 (ただし条例で日影制限が定められている場合を除く) 重要:日影による中高層の建築物の高さの制限」の対象区域の制限の方が、北側斜線制限よりも厳しいので除く |
---|---|
制限の内容 | その部分は前面道路の反対側の境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じて得て数値に5mまたは10mを加えたもの以下 |
【イメージ図】
(引用画像:「まるわかり注文住宅」より)
北側斜線制限の5mと10mの違い
北側斜線制限の住居系の用途地域のすべてに適用されるのではなく、うち5地域(住居専用地域・田園住居地域)に限り適用される。
・「第一種・第二種低層住居専用地域」 ・「田園住居地域」 |
5m
|
---|---|
・「第一種・第二種中高層住居専用地域」 | 10m |
日影による中高層の建築物の高さの制限
日影規制は、建築物の日影が敷地の外に一定時間以上生じないように建築物の形態を規制するものである。
対象区域
日影規制は、住居系の用途地域(8地域)
近隣商業地域、準工業地域または用途地域の指定のない区域のうち、地方公共団体の条例で指定する区域内において適用される。
【規制対象となる建築物】
・「第一種・第二種低層住居専用地域」 ・「田園住居地域」 |
・軒の高さが7mを超える建築物 ・地階を除く階数が3以上の建築物
|
---|---|
・「第一種・第二種中高層住居専用地域」 ・「第一種・第二種住居地域」 |
高さが10mを超える建築物 |
・「用途地域の指定のない区域」 | 次の1)と2)のうち地方公共団体が条例で 指定するもの。1)軒高が7mを超える建築物または地階を除く階数が3以上の建築物2)高さが10mを超える建築物 |
同一の敷地内に2以上の建築物がある場合
同一の敷地内に2以上の建築物がある場合は、これらの建築物は1つの建物とみなされ、日影規制がかかる。
規制の内容
冬至日(12月22日頃)影が一番伸びる時を基準として敷地の外の一定の範囲に一定時間以上の日影を生じさせてはならないものとする。
具体的な日影規制時間については、地方公共団体が条例で指定する。
対象区域外にある建築物についての特例
日影規制の対象区域外(商業地域など)にある高さ10mを超える建築物は、日影規制が適用される場合がある。
冬至日において隣の規制エリアに影がかかる場合は、対象区域内にある建築物とみなされる。
【試験のポイント】
「商業地域」、「工業地域」及び「工業専用地域」は、日影規制の対象区域として指定されることはない。
しかし、「特例(日影規制の対象区域外で高さ10m超の建築物)」により日影規制の適用を受けることがある。
【宅建】過去問「建築物の高さの制限」解説まとめ
高さ制限はいかがでしたか?
どのエリアに適用されるのか?「適用区域」が重要です。
序文の宅建士試験の問題の解答です
問題18
(3)建築物が第二種中高層住居専用地域及び近隣商業地域にわたって存する場合で、当該建築物の過半が近隣商業地域に存する場合には、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定(北側斜線制限)は適用されない。
解答と解説 平成25年度 問題18
(3)解答:誤り
北側斜線制限は第一種・第二種低層住居専用地域若しくは田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域(条例で日影制限が定められている場合を除く)内の建築物に制限されるが、用途地域の異なる建築物の部分ごとに北側斜線の制限を受ける。
敷地の過半の用途地域の制限が適用されるのではない(建築基準法56条1項3号・5項)
(参照:【平成25年 問18項3】過去問解説より)
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