宅建の試験内容で最低限おさえておくとよい部分をまとめています。
前回の「直前まとめ権利関係2」では下記の宅建試験でよく出題される重要ポイントをまとめました。
・「債務不履行・契約の解除・危険負担」
・「債務譲渡・弁済・相殺・その他の債権消滅原因」
・「保証債務・連帯債務」
・「担保物件一般・質権
本文では「パーフェクト宅建 基本書」の宅建用語ナビを元に解説していきます。
Contents
宅建過去問まとめ:抵当権・根抵当権
抵当権は担保物権の中で、実務上、最も利用されるので宅建試験でも毎年出題されています。
特に第三者に関連する論点(消滅請求等)がよく出題され、また物上代位性が重要です。
抵当権
抵当権とは、設定者(借主)に担保物の使用権や処分権を残したまま、財産的価値を担保に取り、債務者が弁済しない場合は、それを債権として回収できる権利のこと。
設定者は担保物を使用できるのが特徴。
【ポイント】
・抵当権の効力は、設定当時の畳や建具、それに借地権にも及ぶ。
・利息や損害賠償金は、原則として満期となった最後の2年分が担保される。
・抵当権者が抵当権を譲渡すると順位が入れ代わり、放棄すると同順位になる。
その場合は相手方が無担保権者の場合は、「抵当権の〜」となり、後順位担保権者の場合は「抵当権の順位の〜」となる。
法定地上権
成立要件が非常に重要で、宅建試験で毎年1問は出題されている。
【3つの成立要件】
1)抵当権設定当時、土地と建物が存在していること(同時存在)
2)抵当権設定当時の土地と建物の所有者が同一であること(同一所有)
3)抵当権の実行により、土地と建物所有者が別々になったこと
根抵当権
ある範囲の不特定債権を、極度額(担保の上限)の範囲内でまとめて担保する抵当権。
根抵当権では、元本確定前は付従性が緩和され、随伴性が否定される。
【ポイント】
・被担保債権がゼロになっても、根抵当権は消滅しない。
・被担保債権が譲渡されても根抵当権は移転しない。
・極度額の範囲内であれば、2年分を超える利息も担保される。
宅建過去問まとめ:時 効
下記を理解して整理しておく。
・取得時効では「所有の意思」と「占有の承継」
・消滅時効では「時効の起算点」と「援用権者」
消滅時効と遡及効
時の経過で権利が消滅する制度。
所有権は消滅しない。
・不確定期限の付いた債権は、期限到来時から時効期間が進行。
遡及効
時効の効果は、時効期間の最初にさかのぼる(遡及効)
例)10年間占有を継続して他人の土地を時効取得した場合、その土地は10年前から時効取得者の所有物であったことになる。したがって、10年分の使用料は発生しないので、支払いは不要。
時効の援用
援用とは「時効により、あなたの土地は私の物になりましたよ」と主張しなければならない。
時効の援用をしないと土地の取得は有効にならず、援用権者とは「時効により直接利益を受ける者」である。
・主たる債務の消滅時効では、保証人や連帯債務者等にも援用権がある。
宅建過去問まとめ:相 続
相続の試験問題を解く場合は、相続人は誰か?相続の順番、法廷相続分などをおさえる。
遺言は方式と能力、遺留分は意義と遺留分滅殺請求権に注意。
代襲相続
推定相続人が、被相続人の死亡以前に死亡していたり、相続欠格や廃除に該当する場合は、その子供や孫が代わりに相続する制度。
兄弟姉妹は代襲相続はOK。しかし、再代襲相続はなく一代限りで終わる。
単純相続
被相続人のプラスとマイナス財産(借金)の両方を無限に継承する相続制度。
自分が相続人になったことを知った時から、3ヶ月を経過すると単純相続になる。
限定承認
相続によって得たプラス財産の範囲内で、借金も引き継ぐ相続制度。
相続人が全員で行う。
もし、相続人の1人が相続放棄をしても、残り全員で限定承認できる。
遺留分
相続人のために必ず残される遺産の一部。
被相続人は遺言でこれを奪うことはできない。
配偶者・子供・直系尊属には遺留分はあるが、兄弟姉妹にはない。
遺留分の取戻権が遺留分滅殺請求権で、行使期間に制限がある。
遺留分は、相続開始前でも放棄はできる(家裁の許可が必要)
放棄しても相続権はあり、他の相続人の遺留分は増加しない。
宅建過去問まとめ:不法行為
故意または過失により、交通事故を起こしたような場合、加害者が被害者に対して負う賠償責任を「不法行為責任」という。
使用者責任
使用者Aは、雇っている従業員Bが、仕事中に他人に損害を与えた場合は、その賠償責任を負う。
Bを被用者と言う。
Aが損害を賠償した場合は、Bに対して「支払い分を払え」と求償できる。
求償できる範囲は、信義則上相当な部分で、常に全額ではない。
被害者が仕事中でないことを知っていた場合などは、使用者は責任を負わない。
工作物責任
建物の一部が崩壊して、通行人が怪我をした場合は、その建物を使っている者(借主=占有者A)または、所有者Bが被害者に責任を負う。
まずは占有者Aが責任を負うが、Aが自ら損害の発生を防止するために必要な措置を講じていたと証明できる場合は、二次的に所有者Bが責任を負う。
所有者Bの責任は免責がない。
占有者、所有者は責任のある工事の請負人などにも求償できる。
第717条(土地の工作物の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
②(略)
③ ①②の場合に損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者または所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
二次的にというのは、最終的にという意味になります。
一次的には、占有者が必要な注意をしていなければ、占有者が責任を負います(過失責任)。
占有者に過失がなければ、所有者が、二次的に(最終責任:無過失責任)責任を負うことになります。
注文者の責任
請負人だけでなく注文者の責任もあります。
第716条(注文者の責任)
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りではない。
と定められています。請負工事における注文者の責任(民法716条)より
共同不法行為責任
複数の者が共同の不法行為で他人に損害を与えた場合の責任。
自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、他の者に求償できる。
不真性連帯債務
連帯債務と同じ。
多数の債務者が同一内容の給付について全部の履行義務を負い、1人が弁済すると他の者も債務を免れる。
ただ、弁済を除いて、債務者の1人に生じた事柄(請求・消滅時効・免除など)は他の債務者に影響しない。
宅建過去問まとめ:共有・区分所有権
別名(マンション法)とも言う。
区分所有法は、毎年の宅建試験では必ず1問は出題される重要事項。
集会(招集者、集会手続き等)、規約(設定・変更・廃止)及び共有部分に関する集会の決議要件がチェックする箇所。
共 有
不法占拠者に対する明渡し請求は単独でもOK。
損害賠償は、持分の範囲で請求できる。
専有・共用部分
【専有部分】とは、マンションで自分が購入した部屋を指す。
この所有権を「区分所有権」という。
【共有部分】とは、マンションで、専有部分を除いた部分で「みんなで使うみんなの物」は共有部分と呼ばれる。
誰が見ても共有部分とわかる法定共用部分(玄関、廊下、階段など)と、規約で共用部分と決めた規約共用部分(管理人室、集会場)がある。
規約共用部分は、登記をしないと、そのことを第三者に主張できない。
分離処分
共用部分や敷地利用権の持分は、専有部分と分離して処分することはできない。
【例外】
区分所有法に別段の定めがある。
共用部分の共有持分の場合と異なり、規約で区分所有者が特に分離処分を許可した場合は、例外的に認められる。
規約の設定
マンションの共同生活上のルール。
分譲業者が最初に案を作成し、書面による合意の成立が通常。
管理者
原則として集会決議によって選任・解任され(規約に別段の定めがなれば各過半数で決める)。
区分所有者の代理人としてマンション管理を執行する。
管理者は区分所有者以外でもよい。法人が請負う場合もあり。
議決権
建て替えの決議:5分の4以上の多数が必要
4分の3以上の多数による集会の決議が必要な場合
・共用部分の変更、規約の設定、変更、廃止
・建物価格の2分の1を超える滅失の場合の建物の共用部分の復旧
集会
マンションの管理に関する事項を決定する。
管理者は少なくとも毎年1回は集会を招集しなければならない。
管理者が招集しないときは、区分所有者(定数、議決権の5分の1以上)は、管理者に招集を請求できる。
借地権・賃借権
毎年の宅建試験では必ず1問は出題される重要事項です。
借地契約の期間(更新・建物の滅失の場合)と対抗要件、定期借地権、建物買取請求権と留置権の関係の整理が必要です。
借地権
土地を借りて使う権利。
最初の契約期間を当初の期間(原則30年)、それ以後を更新の期間(20年、10年)
【ポイント】
・請求・継続更新は、更新時に建物が建っていることが要件。
賃貸借契約
貸主が有料で物を借主に貸し出す契約。
・契約期間の最長は20年間。
・借主は、必要費は直ちに、有益費は契約終了時に返還請求ができる。
・不動産賃借権の対抗力は登記。新家主が借家人に賃料を請求するには登記が必要。
・賃借権の無断譲渡や転貸借は禁止され、貸主の承諾が必要。
・承諾を得た転貸借の場合、賃貸人は転借人まで直接賃料の支払い請求ができる。
定期借地権
当初予定されていた契約期間が終了すると、必ず終了する借地権のこと。(更新がない)
【定期借地権の種類】
普通借地 | 一般定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | 事業用定期借地権 | |
期間 | 30年以上 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上50年未満 |
方式 | 口頭可 | 何らかの書面 | 口頭可 | 公正証書 |
目的 | 限定なし | 限定なし | 限定なし | 事業用建物所有 |
建物 | 買取請求 | 借主収去 | 貸主買取 | 買取請求 |
注意:公正証書にしないと普通の一般の定期借地になる
建物買取請求権
建物の買取請求であり、借地権は請求の対象にならない。
借地人は、建物代金を受け取るまでは、建物の引渡しを拒否できる。
借家法
借家契約の期間、対抗要件、定期借家権、内縁者等の借家権の承継、造作買取請求権と留置権の関係などを整理しておく。
借家権
借地借家法の適用を受ける建物賃貸借(使用貸借には適用されない)。
期間は最短(1年未満は期間の定めがない契約として扱われる)、最長ともに自由に設定できる。
登記のほか、建物引渡しも対抗要件となり、賃貸借の終了は、転借人への通知が必要。
定期借家契約
契約期間が終了すると、必ず終了する借家契約。
1年以上の契約では、事前の終了通知が必要。
保護3種
弱い立場の者を保護する規定がある。
【内縁者等】
内縁の夫が相続人なくして死亡した場合、内縁の妻が借家権を継承する制度。
内縁の妻が承継しない特約は有効。
【転借人】
転借人の保護。
建物賃貸借が終了した場合でも、賃貸人は、適法な転借人に対して賃貸借の終了を通知しなければ、その終了を対抗できない。
【借地上の建物賃借人】
借地上の建物の賃借人の保護 借地上の建物が賃貸されている場合、借家人が借地権の満了による終了を一年前までに知らなかったときは、裁判所は、借家人の請求により、1年を超えない範囲内で、土地の明け渡しにつき、猶予期間を付与できる。
・借地人の債務不履行による終了の場合は、借家人は保護されない。
建物買取請求権
・代金受領まで留置できるのは造作だけ、建物はできない。
・定期建物賃貸借でも同様。
不動産物件変動の対抗要件
登記がなくても、権利を対抗できる第三者を整理しておく。
取消し、無効、解除という法律行為と登記との関係を理解する。
背信的悪意者
背信的悪意者とは、他人に損失を与える意図で、先に登記の移転を受ける者のこと。
二重譲渡の場合、第1の買主Aは、第2の買主Bが登記を備えていても背信的悪意者であれば、Bに対して登記なくして所有権を対抗できる。
しかし、背信的悪意者Bが、善意のCに転売した場合は、第1の買主Aは、登記が無いとCに対抗できない。
物権変動と登記「取消し前」と「取消し後」の第三者
第三者の所有権取得が「取消し前」か「取消し後」かによって処理の仕方が違う。
「取消し前」:登記がなくても取り消しの結果を対抗できる。
「取消し後」:二重譲渡と同じ。先に登記した者が対抗できる。
権利関係の直前まとめはいかがでしたか?
次は「法令上の制限」のまとめの記事も読んでみてください。
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