今回の宅建士になるための権利関係の過去問解説は、引き続き「借地権」の2回目です。
前回の「借地権1」では、契約期間、更新、拒絶する場合の必要な条件や自己借地権などについて解説しました。
借地権は毎年、宅建士試験で出題される重要な分野です。
建物が滅失した場合の再築や解約の申し入れは、契約期間中か更新後でどう変わるか?なども要チェックでしたね!
* 参考記事 「宅建士になるための過去問解説【権利関係】借地権1。賃貸の家賃交渉で得する方法とは?」
ここで賃借人が他人に無断で土地を貸した場合の問題です。
(賃借人から土地を借りる人を転借人といいます)
下記の2つは、正解か誤りのどちらでしょうか?
問題9_3項
土地の賃貸人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。
法定解除権とは、法律の規約で生じた契約を解除する権利のことです。
賃借人が借りている土地を無断で譲渡、転貸した上に、賃料を支払わない事に対して、契約を解除できるか?が問われています。
また転借人は、土地の明け渡し請求を拒絶できるのでしょうか?
問題9_4項
土地の賃借人が無断転貸した場合、転借人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約が合意解除されたとしても、転貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある
上記の2つの内容は、平成27年度の宅建士試験の権利関係で出題されました。
今回は「定期借地権」「賃借権の譲渡」「賃借地の転貸」など宅建士の不動産実務で最も重要な分野を、引き続き解説していくので、読んでみてください!
Contents
宅建の過去問解説:定期借地権
定期借地権とは、需要の多様化に対応するために借地借家法で制定された制度です。
当初に予定された契約期間の終了によって、必ず契約が終了するタイプの借地権です。
それぞれ下記の3つを総称して定期借地権と呼びます。
・一般定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付き借地権
公正証書などの書類の有無や契約期間の引っ掛け問題が、宅建士試験でよく出題されます。
一般定期借地権
借地権の存続期間を50年以上に設定し、特約が定められる借地権です.
定めることができる特約
・建物の再築による存続期間の延長の規定の適用がない。
・建物買取請求をしない
契約は、公正証書による何らかの書面によって行わなければならない。
(*注意 必ず公正証書である必要はなく、書面であれば何でもよい)
事業用定期借地権
主に事業用の目的に使われる建物(居住用は除く)に設定される借地権です。
10年以上50年未満で設定できます。
存続期間:10年以上30未満契約の更新、建物の再築による契約の延長、建物買取請求権の規定がない
上記の規定の適用を排除する旨の特約ができる
事業用定期借地権の設定契約は、必ず公正証書で行う必要があります。
事業用なので、公証人の目を通して適法性を確かめてもらう目的があります。
建物譲渡特約付き借地権
借地権の設定後、30年以上を経過した日に、借地上の建物を相当の対価で、借地権設定者に譲渡する旨を特約した借地権のことです。
相当な対価で譲渡とは、時価として妥当な価格で買い取ることです。
この建物譲渡特約の契約は、特に書面で行うことは義務付けられていないので、口約束でも成立します。
特約によって借地権が消滅した場合は?
その賃借権者あるいは、建物の賃借人が建物を使用している場合は、それらの者が請求すれば、その者と借地権設定者の間に期間の定めがない借地契約が締結されたものとみなされます。
賃借権の譲渡、賃借地の転貸
まず、最初に譲渡と転貸の意味を押さえておきましょう。
譲渡:借地人が借地権を第三者に売買・贈与などにより、移転すること
転貸:借地人が自己と地主との借地関係はそのままにしておいて、借地を第三者へ賃貸すること
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
借地権が地上権の場合:地上権の譲渡、土地の賃貸は自由にでき、地主の承諾は要らない。
借地権が賃借権の場合:地主(賃借人)の承諾なしに、賃借権を譲渡する、賃借地を転貸することはできません。
もっとも、土地と建物は別個の不動産なので、借地上の建物を第三者に貸しても借地権の無断譲渡または無断転貸には、当たりません。
借地権があれば、建物の場合の承諾は必要ない?
賃借権の譲渡または、賃借地の転貸については、地主の承諾が必要なのでしょうか?
地主の承諾のある場合
譲渡や転貸の承認を得た場合は、賃借人は、地主に対抗することができます。
譲渡のときは、従来と同じ内容の契約が継続されます。
しかし、従前の契約の残存期間の範囲内のみになり、転貸の場合も賃借人と同じ契約になり、残存期間のみになります。
民法では、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負うので、地主はいずれにも(賃借人と転貸人の両方)に地代を請求できます。
地主の承諾がない場合
賃借人が、地主に無断で譲渡や転貸を行い、目的物を勝手に第三者に使用させた場合は、地主は借地契約を解除することができます。
もし、地主が承諾しない場合は、建物の譲受人は地主に対して、建物買取請求権を行使できます。
地主の承諾に代わる裁判所の許可
賃借人がその建物を他人に譲渡する場合に、地主が土地の賃借権の譲渡または賃借地の転貸を拒む時は、どうすればよいのでしょうか?
裁判所は、賃借人の申し立てにより、地主の承諾に代わる許可をすることができます。
この場合は、地主には優先的な買受権が認められています。
この買受権とは、地主が、賃借人が譲渡したい土地や建物を優先的に買える権利のことです。
建物買取請求権
借地人は、建物の買取を地主に一方的に請求することが認められています。
借地権消滅後、契約が更新されない場合は、借地権者は時価で建物その他の付属物を借地権設定者に買い取るべきことを請求できる(同法13条1項)
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
第三者の建物所得者であっても、地主へ建物の買取請求は、賃借人と同様にできます。
建物買取請求の形成権とは
建物買取請求権は形成権です。
この形成権とは、相手の承諾がなくても売買契約が成立するのと同じ結果になることです。
借地人は、買主の立場になる借地権設定者(地主など)が建物の代金を支払うまでは、建物と敷地の引き渡しを拒否できます。
これは同時履行の抗弁権、または留置権に基づく権利です。
しかし、建物の代金を払ってもらうまで、引渡しを拒む事はできますが、その間の地代は地主へ支払う必要があります。
また、地主側が不公平にならないように、借地人の賃料の不払いが原因の契約解除の場合は、建物買取請求権は発生しません。
地代等の増減額請求権
地代や土地の賃料が、近隣の類似の土地の地代や賃料に比べて不相応な場合は、契約条件にかかわらず、当事者は増減を請求することができます。
(*もし当事者間で一定期間増額しないなどの特約がある場合は、増額請求ができない)
協議が整わないときは、裁判で確定するまで 自分が相当と認める額の地代等を支払うことで地代・家賃は足ります。
また、相手方が受け取りを拒んでも法務局に供託しておくと 支払っていることになります。
裁判の確定後は、もし賃料が足りなければ、その不足額に年1割の割合の支払期後の利息を加えて支払う必要があります。
逆に余分に支払い過ぎていた場合は、超過して支払った額に年1割の割合による受領時からの利息を足して返還されます。
調停前置主義
裁判を起こす前に調停を申し出る必要があります。
一時使用の賃貸借の場合
借地の目的が、一時使用のためである場合は、契約期間、更新、期間満了による建物買取請求権、借地条件の変更、定期借地権の多くの規定は適用されません。
宅建過去問まとめ:借地権2
借地権の内容は、いかがでしたか?
「定期借地権」「賃借権の譲渡」「賃借地の転貸」などは理解できましたか?
問題の解答
3)正しい
いわゆる「信頼関係破壊の法理」の適用により、無断譲渡転貸の場合にも賃貸借契約を解除できる場合とできない場合がある。
また、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借を解除する場合にも、同様に「信頼関係破壊の法理」の考え方が適用されている。(最判 昭39年7.28)
4)正しい
転借人に債務不履行等のない場合には、賃貸土地の明渡請求を拒絶することができることがある(民法613条)
(参照:【平成27年 問9項3,4】過去問解説より)
「信頼関係破壊の法理」とは、信頼関係で成り立つ賃貸借契約で、信頼関係が壊された場合は、一方的に解除できるが、信頼関係を壊したといえない行為は、解除は認められないということです。
よって、解説では、解除できる場合とできない場合があるとしています。
転借人にも借地権はあるので、不利な状況になる明渡請求を拒絶できる場合もあります。
借地権の宅建士試験のポイント
・借地権とは、建物所有を目的とする地上権と土地賃借権を総称していう。
・借地権の存続期間は、当初は30年、1回目の更新時は20年、2回目以降は10年
これよりも短い期間を定めても無効。これよりも長い場合は、その期間になる。
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