今回の宅建士になるための過去問解説は、「法令上の制限」である「建築基準法の概要と建築に関する手続き」についてです。
建築基準法とは、国民の生命や健康の安全を図るために、建物に関しての最低限の基準を定めている法律です。
その中でも建築確認は、建築物に関する工事計画が法の定める基準に適合しているかどうかを事前にチェックする制度です。
この分野で最も宅建士試験に出題される重要項目は「建築確認」です。
平成29年度に出題された過去問題を解いてみましょう。
問題18
1)鉄筋コンクリート造であって、階数が2の住宅を新築する場合において、特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたときは、検査済証の交付を受ける前においても、仮に、当該建築物を使用することができる。
正しいか誤りか?
建築確認は毎年の宅建士試験では、必ず1問は出ます。
以下、手続きの流れを本文でしっかりと確認していきましょう!
Contents
【宅建】過去問解説:法の目的
建築基準法が定める建築物の敷地、構造、設備等に関する基準は2つに分かれる。
単体規定 |
全国どこでも適用 個々の敷地、建築物の衛生、安全性の確保 |
---|---|
集団規定 |
都市計画区域・準都市計画規定のみ適用 良好な集団的建築環境の確保 道路の制限、建築物の高さ、防火地域・準防火地域などの制限 |
法の適用関係等
集団規定は、都市計画区域・準都市計画区域のみに限り適用される。
その他の規定(総則、単体規定、建築協定)は全国に適用される。
都市計画区域・準都市計画区域以外の区域内
都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域のうち、都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域になる。
建築基準法の集団規定が直接的に適用されることがないので、うち一定の区域については、条例によって、その集団規定に準じた制限を定めることができる。
よって地方公共団体は、条例で、建築物の高さ、壁面の位置その他の建築物の構造または敷地に関して必要な制限を定めることができる。
【準景観地区内】
景観法の規定に基づき、景観の保全を図るために市町村は別途、条例で下記を定めることができる。
・建築物の高さ
・壁面の位置
・その他の建築物の構造または敷地に関して必要な制限
これらは、都市計画区域及び準都市計画区域以外で、リゾートマンション等が無秩序に建築される事などを防ぐために定められています。
法に適用されない建築物
国宝・重要文化財等
国宝、重要文化財として指定され、または仮指定された建築物が対象。
建築基準法の規定は適用されない。全面的適用除外である。
既存不適格建築物
時代が変わり法が改正されたときに、その適合しない規定の部分は適用されない。
いわゆる「既存不適格建築物」である。
用語の定義
建築;建築物を新築し、増築、改築、移転すること
建築主:建築物に関する工事の請負契約の注文者、または請負契約によらず自ら工事をする者
建築確認
建築主は、建築物に関する一定の工事をしようとする場合には、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
(法6条1項)
(参照:「パーフェクト宅建基本書」より)
なお、指定確認検査機関の確認を受け、確認済証の交付を受けたときは、当該確認済証は建築主事により交付された確認済証とみなされる。
この場合は、建築主事への確認申請を要しない。
また、「完了検査」「中間検査」についても、指定確認検査期間がその検査を引き受けた場合には、建築主事に対して検査の申請をする必要はない。
* 指定確認検査機関とは
国土交通大臣または都道府県知事の指定を受けた民間機関で、建築主事と同様に建築確認、完了検査、中間検査の業務を行うことができる。
建築主は、建築主事への申請かこの指定確認検査機関への依頼を任意で選択することができる
建築確認の申請の流れ
申請の流れと手続きにかかる期間を軽く頭に入れておきましょう。
建築確認の要否
◯=確認必要、 X=確認不要
建築は「新築」「増築」「改築」「移転」を含む
建築物の修理・規模 | 建築 |
修繕 模様替 |
用途 変更 |
---|---|---|---|
【全国】 (1)特殊建築物 その用途に供する部分が100㎡を超える |
◯ | ◯ | ◯ |
【全国】 (2)木造の大規模建築物 階数3以上、延面積500㎡を超える (3)木造以外の大規模建築物 階数2以上、延面積200㎡を超える |
◯ | ◯ | ー |
【一定の区域】 (4)一般建築物(上記(1)〜(3)以外の建築物) |
◯ | X | ー |
【一定の区域とは】
都市計画区域、準都市計画区域(都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く)、もしくは準景観地区(市町村が指定する区域を除く)
または、都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域
防火地域及び準防火地域外
防火地域及び準防火地域外において、下記の場合は確認を要しない
・増築、改築または移転しようとする場合
・その増築、改築または移転に係る部分の床面積の合計が10㎡以内
類似の用途変更
一定の類似の用途相互間における用途変更であるときを除き、確認を要する。
類似の用途変更の例
・劇場、映画館、演芸場間の用途変更
・ホテル、旅館間の用途変更
・下宿、寄宿舎間の用途変更
確認の期間
建築主事は、確認の申請書を受理した日から
・35日以内(上記の表中(1)〜(3)の特殊建築物、大規模建築物の場合)
・7日以内(同表中(4)の一般建築物)
に審査し、申請者に確認済証を交付しなければならない。
消防署の同意
特定行政庁、建築主事又は指定確認検査機関は、確認をする場合には、当該確認に係る建築物の工事施工地または所在地を管轄する消防長消防本部を置かない市長村にあっては市町村)、または消防署長の同意を得なければ、当該確認をすることができない。
(参照:「パーフェクト宅建基本書」より)
・消防長や消防署長の同意を得るのは、特定行政庁、建築主事または指定確認検査機関
【例外:消防長等の同意が不要の場合】
・防火地域又は準防火地域以外の区域にある住宅
(長屋、共同住宅、その他一定の住宅を除く)
例)事務所であれば、消防長等の同意は必要
建築物の完了検査
【完了検査の申請】
建築主は、確認を受けて行った工事を完了したときは、完了した日から4日以内に建築主事に「完了検査」を申請しなければならない。
【完了検査】
建築主事は、上記の申請を受理した日から7日以内に検査をし、建築基準関係法規に適合していることを認めたときは、建築主に対して検査済証を交付しなければならない。
【建築物の使用制限】
特殊建築物・大規模建築物の新築その他一定の工事の場合には、検査済証の交付を受けた後でなければ、その建築物を使用してはならない。
下記の場合は仮使用ができる
・特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたとき
・建築主事または指定確認検査機関が、安全上、防火上及び避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合していると認めたとき
・完了検査の申請が受理された日から7日を経過したとき
建築物に関する中間検査
【中間検査の申請】
建築主は確認を受けた工事が、下記に該当する工程(以下「特定工程」という)の場合は中間検査を申請しなければならない。
1)階数3以上の共同住宅の床及びはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち、政令で定める工程
2)特定行政庁が指定する工程
この申請は、特定工程に係る工事を終えた日から4日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
【中間検査】
建築主事が中間検査の申請を受理した場合には、建築主事は、その申請を受理した日から4日以内に、その検査をしなければならない。
建築工事届・建築物除却届
建築物を建築しようとする場合、または建築物を除却しようとする場合には、その床面積の合計が10㎡以内であるときを除き、
建築主事を経由して、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
過去問解説:まとめ「建築基準法の概要と建築に関する手続き」
建築基準法はいかがでしたか?
建築士試験の勉強をしていない人でないと、最初はとっつきにくいかもしれません。
しかし、慣れると覚えやすい分野なので、繰り返し根気強く過去問を解いて下さい。
過去問の解説
問題18
1)鉄筋コンクリート造であって、階数が2の住宅を新築する場合において、特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたときは、検査済証の交付を受ける前においても、仮に、当該建築物を使用することができる。
解答
1)正しい
特殊建築物や大規模建築物(本肢は鉄筋コンクリート造で階数2なので、これに該当する)の新築工事では、検査済証の交付を受けた後でなければ、当該新築に係る建築物を使用してはならないが、特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたときは、使用することができる(建築基準法6条1項3号、7条の6第1項)
(参照:【平成28年 問17項3、4】過去問解説より)
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