宅建建物の取引には、「売買」と「賃借権」が最も重要です。
そして、他にも重要な取引「贈与・請負・委任」の3つがあります。
今回の宅建士の過去問解説は、3回のシリーズで「贈与」・「請負」・「委任」について紹介します。
1回目は「贈与」についてです。
ここで平成25年度の宅建士試験で出題された問題です。
贈与者は、贈与の目的である物又は、権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う旨
正解か不正解か?
無償で譲った権利や物でも、もし瑕疵があれば、贈った方が責任を負わされてしまうのでしょうか?
答えは、本文で解説した後にお伝えします。
遺産相続では、生前贈与を受けた分も計算しなければならないです。
「贈与」は「相続」の分野に深く関わります。
また、生前贈与とは、生きている間に財産を譲る制度です。
相続財産を減らし、それによって相続税を減らすことになると注目されています。
特に平成25年度の税制改正以降から、
相続税の節税や遺産分割対策のために生前贈与を行う人が増えています。
宅建士試験では、毎年相続が出題されます。
それに関連する贈与は、マスターした方が正解率が上がります。
宅建士の試験対策だけでなく、将来、相続で損しなくて済むように、ぜひ読んでみて下さい。
簡単に「相続」が理解できる記事はこちらから
* 参考記事「宅建士の過去問解説【権利関係】相続1(相続範囲と順位・相続分)」
Contents
贈与とは?
【意義】
贈与とは、ある人(贈与者)が相手方(受贈者)に無償である財産権を与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することによって成立する契約である。(549条)
(参照;「パーフェクト宅建 基本書」より)
下記の特徴があります。
無償契約・片務契約:無償で財産を与える契約
諾成契約:また目的物の引き渡しを待たず、当事者間の合意のみで成立
民法の条文では、対象となるのは「自己の財産」です。
しかし「他人の財産」であっても贈与は有効に成立します。
撤回
贈与契約の成立には、特に決められた方式などはなく、書面による必要はありません。
しかし、書面によらない贈与は、いつでもこれを撤回できます。
また既に引き渡されるなど「履行の終わった部分」は撤回できません。
贈与済みのお金は戻ってこないという事です。
不動産の贈与に関しては、
「引渡し」か「移転登記」のいずれかがなされれば、
既に履行が終わったと判断されます。
返せとは言えなくなります。
贈与において贈与する人のことを「贈与者」、贈与を受ける人のことを「受贈者」と呼びます。
効力
贈与者は、下記の2つの義務と責任を負います
財産権移転義務
贈与者は、受贈者に対して、財産権の移転義務を負います。
不動産では、具体的には目的物件の引渡し、登記などです。
贈与者の担保責任
贈与では、その契約は無償になります。
贈与者は、贈与の目的物または権利の瑕疵、または不存在については、責任を負いません。
ただし、贈与者がその瑕疵または、不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は別です。
公平の観点から責任を負う必要があります。
特殊な3つの贈与
贈与とは、無償で財産を譲ることですが、それ以外に特殊な事例が3つあります。
・定期贈与
・負担付贈与
・死因贈与
死因贈与と似たものに遺贈があります。
それぞれの違いをみていきましょう。
定期贈与
定期贈与とは、一定の期間ごとに一定の給付をする贈与契約
毎月月末に一定の金銭を支払うなどです。
通常は、当事者の生存の間に限るという意思のもと行われます。
もし片方が死亡した場合でも、その権利義務は相続人に承継されません。
贈与契約の効力は、その人限りで失われます。
負担付贈与
負担付贈与とは、受贈者に一定の負担を負わせる贈与契約です。
例えば家屋を贈与して、その代わりに家賃収入の一部を毎月給付させることです。
この場合は、家の家賃収入の一部を払うだけなので、基本的に受贈者は無償契約です。
しかし、実質的には負担の限度で対価関係に立ちます。
贈与者はその負担の限度で担保責任を負う必要があります。
死因贈与
死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力が生ずる贈与のことです。
例えば「自分が死んだら、土地をあげる」などと約束することです。
似たものに遺贈があります。
遺贈とは、遺言によって遺産の全部、または一部を無償または負担を付けて他人に与えるもので、遺言という単独行動としてなされるものです。
死因贈与は当事者間の契約であることが、基本的に違います。
遺言と違って被相続人の生前に贈与者と受贈者が合意をしておく必要があります。
宅建の過去問解説:贈与・請負・委任
以上、贈与は理解できましたか?
序文の問題の答えは、正解になります。
贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。
ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、責任を負う(民法551条1項)
(参照:【平成25年 問1-2項】過去問解説より)
贈与者は、瑕疵がある事を知っている場合は、譲る前に相手(受贈者)に告げる必要がありまが、知らなければ、責任を負う必要はありません。
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