今回の宅建士になるための過去問解説は、前回の「業者自ら売主となる場合の規制(2)」に続き3回目です。
業者自らが売主となる場合の8つの規制「8種制限」のなかの1つ「手付金の保全」について解説していきます。
ここで平成28年度の宅建士試験で出題された「手付金の保全」の問題です。
問題43
宅地建物取引業者Aが、自らを売主として、宅地建物取引業者でないBと建築工事完成前のマンション(代金3,000万円)の売買契約を締結した場合
ア Aが、Bから手付金600万円を受領する場合において、その手付金の保全措置を講じていないときは、Bは、この手付金の支払いを拒否することができる。
イ Aが、保全措置を講じて、Bから手付金300万円を受領した場合、Bから媒介を依頼されていた宅地建物取引業者Cは、Bから媒介報酬を受領するに当たり、Aと同様、あらかじめ保全措置を講じなければ媒介報酬を受領することができない。
ウ Aは、Bから手付金150万円を保全措置を講じないで受領し、その後、引渡し前に、中間金350万円を受領する場合は、すでに受領した手付金と中間金の合計500万円について保全措置を講じなければならない。
ア〜ウは正しいか誤りか
解説は本文で!
Contents
【宅建】過去問解説 :「手付金の保全」
「手付金の保全」は、業者自ら売主となる場合の規制です。
数字を扱う問題が出題されるので慣れておきましょう。
下記はチェックポイントです。
・保全の種類や契約の内容
・保全措置が不要な場合
・完成物件の保全措置
手付金等の保全ー未完成物件の場合
「手付金保全」の概要は重要事項の説明事項であるが、37条書面の記載事項ではありません。
また、未完成物件か完成物件であるか?は、契約の締結時を基準に判断します。
保全すべき手付金等
保全すべき手付金等は、契約の締結日以後その宅地建物の引き渡し前に支払われるものをいう。
代金の全部または一部として授受される金銭及び手付その他の名義をもって授受される金銭。
保全措置を講じなければならない範囲
未完成物件 | 代金額の5%、または1,000万円を超える手付金 |
---|---|
完成物件 | 代金額の10%、または1,000万円を超える手付金 |
それを超える部分だけではなく、その全額についても保全措置は必要。
しかし、利息や違約金までは含む必要はない。
保全措置の種類
銀行による保証と保険会社による保証保険と、国土交通大臣が指定する保証機関(指定保証機関)の2つ。
②保険会社による保証保険
保証契約の内容
下記の2つの条件を満たしていなければならない。
・業者が受け取る手付金等の全額の返還を連帯して保証するべきものであること。
・保証すべき期間は、物件の引渡しまでの期間とされていること。
例外:保全措置が不要の場合
・当該宅地建物について、買主への所有権移転の登記がされたとき
・当該宅地建物について、買主が所有権の登記をしたとき
・手付金等の額が、代金額の5%以下で、かつ、1,000万円を超えないとき。
手付金等の保全ー完成物件の場合
未完成物件に比べると手付金等の保全措置が緩い
未完成物件 | 代金額の5%、または1,000万円を超える手付金 |
---|---|
完成物件 | 代金額の10%、または1,000万円を超える手付金 |
工事完了後の物件の場合の保全措置
保全措置は、3種類ある
①銀行等による連帯保証
②保険会社による保証保険
③指定保管機関または宅地建物取引業保証協会による保管
③は、完成物件のみ適用。
手付金等保管事業とは
指定保管機関が工事完了後の宅地建物の売買に関し、宅地業者に代理して手付金等を受領し、受領した額に相当する金銭を保管する事業をいう
指定保証機関とは
国土交通大臣の指定を受けて手付金等保証事業を営む者をいう。
なお、指定保証機関は資本金が5,000万円以上の株式会社でなければならない。
指定保管機関とは
国土交通大臣の指定を受けて手付金等保管事業を営む者をいう。
また、保証協会は、国土交通大臣の承認を受けて手付金保管事業を行うことができる。
指定機関の保証と保管の違い
指定保証機関による保証は、①銀行等による連帯保証及び②保険会社による保証保険と同様に、未完成物件・完成物件を問わない。
しかし、指定保管機関による保管は、完成物件に限られる。
例外:保全措置が不要の場合
上記の未完成物件の条件と額以外は同じ
・当該宅地建物について、買主への所有権移転の登記がされたとき・当該宅地建物について、買主が所有権の登記をしたとき
・手付金等の額が、代金額の10%以下で、かつ、1,000万円を超えないとき。
* 注意 : 手付金等の額が1,000万円を超える場合は、営業保証金の供託額の最低額を超えることになる。
よって完成物件、未完成物件を問わずに、保全措置を講じる必要がある。
まとめ:「業者自ら売主となる場合の規制(3)」解説
3つの「8種制限」は理解できましたか?
序文の解答です。
問題43
宅地建物取引業者Aが、自らを売主として、宅地建物取引業者でないBと建築工事完成前のマンション(代金3,000万円)の売買契約を締結した場合
ア 正しい。
(Aが、Bから手付金600万円を受領)
未完成の売買の場合、買主が代金額の5%(本問の場合は150万)を超える手付金600万を支払う場合には、売主は、手付金等保全措置を講じなければならない。
売主が、手付等保全措置を講じない場合には、買主は支払いを拒絶できる。
イ 誤り。(媒介業者も手付金保全が必要かどうか?)
手付金等保全措置は、宅地建物取引業者である売主が講じなければならないものであって、媒介業者は講じる必要はない。
ウ 正しい。(受領した手付金と中間金の合計額を保全する必要があるか?)
中間金を受け取ると手付金等が5%を超えることになるので、中間金を受け取る前に、500万円分について手付金保全措置を講じなければならない。
(参照:【平成28年 問43項ア〜ウ】過去問解説より)
また、物件が完成した後で受け取る中間金であっても、未完成物件の時に売買契約を締結している場合は、5%が適用される。
手付金と合わせて中間金が5%を超える場合は、中間金を受け取る前に、手付金等保全措置を行う必要がある。
暗記のポイント:「手付金等の保全」
1)完成物件の保全措置は③のみに限られる(未完成物件は①と②しかできない)
①銀行等による連帯保証
②保険会社による保証保険
③指定保管機関による保管
2)保全措置を講じなければならない手付金等の額
・未完成物件の場合:売買代金の5%、または1,000万円を超えるとき
・完成物件の場合:売買代金の10%または1,000万円を超えるとき
3)指定保証機関と指定保管機関
国土交通大臣の指定を受けて手付金等保証事業と手付金等保管事業を営む者をいう。
次の記事では、引き続き最重要の8種制限の1つ「割賦販売の解除」も含む「割賦販売に関する規制」の全体を解説します。
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