不動産登記法は宅建試験でも出題されますが、知っておくと役立つ知識です。
ここで過去問題です。
Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、BはCに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる
上記の内容は、平成27年度の宅建士試験の権利関係で出題されました。
ここでは、主に不動産登記法について解説します。
不動産を所有している、また、これから所有する予定の人にとっては知っておくと得な知識です。
試験勉強中の人も気分転換に読んでみてください!
宅建過去問解説:登記を必要とする物権変動
すべての物権変動に該当するとは限りません。
以下、解説していきます。
法律行為の取り消し
第三者との関係が、取消し前か後か?によって変わります。
取消し前の場合
第三者のCに対して、Aは登記がなくても取消しの結果に対抗できます。
しかし、詐欺を理由とする取消しの場合は例外です。
取り消した結果を善意の第三者には主張できません。
取消し後の場合
取消し後に利害関係をもつに至った第三者との関係では、取消しをした者は登記がなければ対抗できません。
二重譲渡と同様に考えられます。
契約の解除
解除前か後によって、第三者との関係が変わります。
解除前の第三者との関係
解除前に既に権利を取得している第三者には、解除の効力は及びません。
解除による物権の復帰を主張することができません。
解除後の第三者との関係
解除の意思表示をした後で、別に利害関係を持つことになった第三者と、解除した者の関係は二重譲渡と考えられます。
上記の「取消し後の場合」と同様に考えても良いです。
相続と登記
相続した場合でも登記がないと、第三者に対抗できると場合とできない場合があります。
少し関係がわかりにくいので、関係を整理しながら覚えましょう!
売買契約後に売主が死亡して、相続人が目的不動産を相続した場合
買主は登記がなくても相続人に対抗できます。
相続人は、「第三者」の立場にはなりません。
売主としての被相続人の登記移転義務を承継しなければならない者です。
相続後で、相続人が第三者へ目的不動産を譲渡してしまった場合
その相続人からの買受人と被相続者からの買受人は対等な関係です。
この場合は、先に登記した者が勝ちます。
この場合は、登記がないと対抗できないケースです。
共同相続人の一人が勝手に譲渡した場合
共同相続人の1人Aが、自己の持ち分を超える分も権利があるとして所有家登記を行い、
第三者へ全部の譲渡をして移転登記した場合です。
他の共同相続人は、自己の相続分を、登記がなくても、その第三者に対抗することができます。
なぜならば、共同相続人Aが本来持っていない部分は、たとえ登記がされたとしても実体に合わない無権利者の登記だからです。
取得時効と登記
第三者の所有権取得が、土地を継続占有する者の時効完成の前か後かで、第三者へ対抗する為に、登記が必要か不要か?が決まります。
登記が不要なケース(時効成立前)
Aの所有地をBが継続占有している。
途中AからCに土地所有権が譲渡されたが、その後Bに取得時効が成立した場合。
ここでは、Bは登記なしにCに所有権は主張できます。
時効完成時における所有者であるCとBは(時効という)物権変動の「当事者」になります。
当事者間では、権利主張に登記は不要です。
登記が必要なケース(時効成立後)
Aの所有地をBが継続占有して時効が完成。
その後、Aは、Dに当該土地所有権を譲渡した場合はどうなるのでしょうか?
ここでは、A→B、A→Dの二重譲渡の関係になります。
この場合は、先に登記を受けた方が所有権を取得します。
時効取得者は、事項完成時の権利者に対しては、登記がなくても時効による取得を対抗することができる。
(参照:「パーエフェクト宅建 基本書」より)
なぜならば、事項取得者に時効完成時に既に登記済みであることを要求するのは無理だからです。
時効完成後に現れる第三者への対抗は登記が必要
時効取得は、取引による取得でないからといって、いつまでも登記をする必要がないわけではありません。
時効取得を対抗(主張)するためには、登記が必要です。
宅建士まとめ:不動産物権変動の対抗要件2
正解。
時効により不動産の所有権を取得した者は、時効の進行中に原取得者から所有権を取得して登記を備えた者に対しては、登記を備えなくても、時効による所有権の取得を対抗することができる(同法177条、最判 昭41.11.22)。
したがって、BはCに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
(参照:【平成27年 問4項3】過去問解説より)
宅建士試験によく出題されるポイント
・登記がなければ対抗することができない第三者とは、正当な競争関係にある人のこと。
・第二の譲受人が不動産を取得した当時、先に譲り受けた者がいると知っていたとしても、背信的悪意者でない限り、先に登記すれば勝つ。
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