今回の宅建士になるための過去問解説は、「権利関係」の「保証債務・連帯債務」です。
この「保証債務」と「連帯債務」は、宅建試験では、2つ合わせると過去10年間の間に合計8回出題されています。
下記は、実際に宅建士試験で出題された問題です。
Q1.【平成22年 8問-2項】
保証人となるべき者が、主たる債務者と連絡を取らず、同人から委託を受けないまま債務者に対して保証したとしても、その保証契約は有効に成立する
Q2.【平成22年 8問-3項】
連帯保証ではない場合の保証人は、債権者から債務の履行を請求されても、まず主たる債務者に催告すべき旨を債権者に請求できる。
ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又は行方不明である時はこの限りではない。
「保証債務」と「連帯債務」の違いも本文で整理していきましょう!
宅建過去問解説:保証債務と連帯債務は違う
債務とは、簡単にいうと返済義務のある借金のことです。
債務には保証債務と連帯債務の2種類があります。
共同で連帯して責任を負うのを連帯債務といいますが、実は責任の範囲が保証債務と違います。
ではどう違うのか?
まず、保証人と保証債務から順番にみていきましょう。
保証人と保証債務とは?
まず保証人とは、簡単に説明すると借金を払えなくなった人の代わりに、責任を負う人です。
例えば、人にお金を貸すときに、もし借りた人が返せない場合は、別の人が代わりに返すという事を約束してもらえれば、安心して貸すことができる。
この「別の人」が保証人です
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
主たる債務者の債務の履行を債権者に対して担保することを内容とする債務のこと
そして「保証債務」とは、お金を借りる人が担保として差し出す債務の事です。
保証債務になる物と範囲
保証債務になるのは、貸金返還債務や売買の割賦金(かっぷきん)支払債務などの金銭だけではありません。
土地建物の引渡しのような金銭債務以外の物もあります。
その範囲は、特約がない限りは、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償、その他すべて主たる債務に充たるものを包含する(447条1項)
全部が対象範囲になります。
保証債務とは? 3つの性質
保証債務の目的は、債務を担保するためのものです。
3つの性質を持っています。
・付従性(ふじゅうせい)
・随伴性(ずいはんせい)
・補充性(ほじゅうせい)
この3つの性質は、宅建士試験にもよく出題されますので、特徴を押さえて下さい。
付従性(保証人に有利な一部保証と反対債権の制度)
主たる債務がなければ保証債務が成立せず、主たる債務が消滅すれば保証債権もまた消滅する
原則は、主たる債務者(お金を返す側)に生じた事由は、原則として保証人にも効力が及びます。
もし、債務の消滅時効が完成した場合は、保証人はそれを援用し、保証債務も同時に消滅したと主張できます。
また保証人は、特に保証債務についてのみ違約金や損害賠償の額を約定できます(447条2項)
理由は、保証債務の目的は履行を確実に行うために設定されているものだからです。
さらに同時履行の抗弁権などの抗弁権を持って債権者に対抗することができます。
もし主たる債務者が債権者に対して反対債権を有している場合は、その債権を持って債権者に対抗することができます。
随伴性
債務と保証債務はくっついています。
保証債務は、主たる債務に対する債権が移転すれば、それに伴って移動する
これは、貸金債権が別の人に譲渡されて、債権者が変わった場合でも、保証債務も一緒に新しい債権者に移ることです。
理由は、保証債務はその債権を担保するために約束されたものです。
新しい債権者にも、保証人がついている安全な債権であるように取り扱われるべきだからです。
補充性(保証人に有利な催告の抗弁権と検索の抗弁権)
保証債務は、独立した債務であるとしても、あくまでも主たる債務に対して二次的な地位にあるので、通常は主たる債務者が履行しない場合に、はじめて履行すればよいはずである。(446条参照)
まず保証人は、債権者からの請求に対しては、主たる債務者へ最初は催告してくれと主張できます。
これを催告の抗弁権といいます。
しかし、もし債務者が破産手続開始の決定を受けた時、行方不明の時は、この催告の抗弁権を行使することはできません。
また保証人は、自分が債権者から強制執行を受けそうになったときは、「まず主たる債務者の財産に対して執行してくれ」と主張できます。
これを検索の抗弁権といいます。
この場合は、主たる債務者に弁済の資力があり、執行が容易にできる場合に限られます。
保証人の求償権
保証人が、主たる債務を代わりに弁済をした場合は、他人のために自分が支払いをした分を返してくれと主張できます。
この償還を求めることができる権利を求償権といいます。
求償権の範囲は保証人になった経緯によって異なります。
・保証人が主たる債務者の委託を受けて保証人となった場合
→ 主たる債務者に対して、弁済額のほか、弁済後の利息及びその他の損害額を求償できる。
・保証人が主たる債務者の委託を受けないで保証人となり、それが債務者の意思には反していない場合
→ 弁済した当時に主たる債務者が得た利益を限度として求償できる。
・債務者の意思に反して保証人になった場合
主たる債務者が現に利益を受けている限度で求償できる。
認めていないのに 保証人になる場合もあるので、その場合は、求償権の範囲が狭まります。
連帯保証人と連帯債務とは?
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負うことを約束する保証です。
民法では、総額900万円の1つの債務について仮に3人の共同債務者(借金を返す人)がいると、原則として各自は300万ずつ債権者に支払えば良い事になっています。
しかし、それではもし債務者の一人が返済しないと、その分が回収できなくなります。
そこで、各3人の債務者が債権者と関係では、それぞれが他の人の債務を連帯で負うとすれば、債権者は安心できます。
参照:「パーフェクト宅建 基本書」より
この連帯債務は、単なる保証債務よりも責任範囲の縛りが強くなるので注意が必要です。
連帯保証人の3つの性質
下記の3つのことが連帯保証人には不利になります。
・連帯保証人には、催告の抗弁権及び検索の抗弁権を有しない(454条)
・連帯保証人には分別の利益がない
・連帯債務の規定が準用される
これらの特質を順番にみていきましょう。
催告や検索の抗弁権がない
連帯保証人は、債権者がいきなり請求してきた場合でも支払う義務があります。
これは、債務者が破産する、行方不明になるなどの事情があっても関係なく、債務の責任は連帯保証人が負わされます。
そして、債権者が強制執行の基本となる債務名義を持っていると、連帯保証人は、債権者から直ちに強制執行を受けても法律で保護されません。
分別の利益がない
分別の利益とは、分ける権利、債務も頭割で負担できる権利です。
数人の保証人がいた場合は、各保証人が主たる債務を平等に分配して支払えば良く、保証債務は、自分の負担分だけで済みます。
しかし、分別の利益が使えない場合は、債務者は誰に対しても全額の請求ができます。
その場合は、連帯保証人は、そのまま全額が肩代わりする必要があります。
例えば、合計2000万の場合は、保証人が2人いる場合は1000万ずつ支払うだけでよいのが、いきなり2000万と全額の返済を請求される可能性もあります。
連帯債務の規定の準用される
連帯保証は、保証と同様に付従性などはあっても、適用されない規定があります。
連帯債務の規定が準用されます。
例えば、主たる債務が弁済、時効、免除などで消滅すれば、保証債務も消滅します。
しかし、連帯保証人の場合は相殺、免除、時効の規定は準用の余地はありません。
その理由は、これらの規定は、連帯債務者の負担部分を前提としますが、そもそも連帯債務者は連帯で責任を負う立場なので、負担部分がないからです。
よって債権者が連帯保証人の連帯保証債務を免除した場合でも、債務は消滅しません。
普通の保証契約とは違い、別契約になるからです。
連帯債務とは
連帯債務とは、共同で債務を負う事をいいます。
複数人の債務者が同一内容の給付について、各人が独立して全部の弁済をすることです。
もしそのうち連帯保証人の一人が、債務を全て分担すれば、他の債務も全て消滅します。
各債務者の債務は独立しており、主従関係の区別がないことが保証や連帯保証とは異なります。
この連帯債務の目的は、債権の回収を確実にするためです。
保証よりも債権の効力を強める作用をもつことが特徴です。
発生原因と効力
連帯債務者の一人に無効または取消しの原因があっても、他の債務者については完全に有効な債務が成立します。
連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者にも効力が生じることを絶対的効力といいます。
他の債務者には効力が生じないことを相対的効力(そうたいてきこうりょく)といいます。
絶対的効力の事由とは?
試験に出題される6つの絶対的効力があります。
・履行の請求
・更改(こうかい)
・相殺
・免除
・混同
・時効の完成
履行の請求
債務者が一人に対して履行の請求をすれば、他の連帯債務人にも同時に請求したことになります。
更改
従来の債務の内容を他の債務内容に新しく変更する契約を更改といいます。
他の債務の履行がなされる代物弁済とは異なります。
例えば一人の連帯債務者が、債権者との間で更改契約を行った場合は、従来の債務は他の全員にも消滅します。
相殺
連帯債務者の一人Aが別の債務者Cが債権者に反対債権を持つ場合に、Cが相殺しない間は、Cの負担部分の範囲内で、自ら相殺することができます。
免除
債権者が連帯債務人の一人の債務を免除すると、その免除した金額分だけ、残りの他の債務が支払わないといけなくなります。
混同
債権者の地位と債務者の地位が同一人になることを混同と言います。
例えば、相続などで、債権者が親、債務者が子供の場合などによく起こります。
親が死亡した後で、相続した子供が債務者から債権者にもなど、立場混同することです。
時効の完成
時効の中断は、連帯債務者の各自別々に生じます。
よって消滅時効の完成時期も全員が同時期とは限りません。
時効が完成して債務を逃れた連帯債務者の負担分だけは、逃れることができますが、債務からは逃れられません。
上記の免除、混同、時効の完成などは、当事者間で簡単に決済ができる仕組みにする事が目的です。
理解しにくいかもしれませんが、連帯債務の6つの用語は重要なので覚えて下さい。
相対的効力事由
上記の6つの絶対効力事由以外に、他の連帯債務者に及ばない効力のことを相対的効力の事由といいます。
・判決の効力
・債務の承認
・強制執行に基づく時効の中断
・時効利益の放棄
・債権譲渡の通知
混乱するので、まずは、絶対的効力の方を優先して覚えて下さい。
相対的効力事由の方は、他の連帯債務者が影響されない事として、軽く理解する程度でも大丈夫です。
保証契約の注意点
保証契約は、口頭だけでは絶対にダメです。 書面または電磁的記録を残さないと有効にはなりません。
これは保証が義理人情で行われる事が多く、安易に保証人になることに慎重にしなければ
ならないという趣旨からです。
保証契約で更に注意が必要な点は、保証人となる契約は、債権者と保証人との契約になる事です。
よって主たる債務者(借金している本人)は保証契約の当事者ではないので、求償権以外は弁済の責任を要求できません。
債務者の代わりに、債権者と借金を肩代わりすることを約束するものである事を忘れてはいけません。
保証人となる資格
基本的に債権者がさえ了承すれば、保証人は誰でもなれます。
制限行為能力者でも弁済できるだけの資金がなくてもです。
しかし、民法ではそれでは問題が起こるので、保証人には2つの要件を求めています。
・行為能力者であること
・弁済の資力を有すること
宅建過去問まとめ「保証債務・連帯債務」
以上、保証と連帯保証の違いがわかりましたか?
宅建過去問の解答
下記は、実際に宅建士試験で出題された問題です。
試験のポイント!
保証債務とは、どういう状況であれば成立つか?
保証人が債務者の代わりに返済した後は、債務者へ返済した額を請求できる求償権もチェック
Q2.【平成22年 8問-3項】
【解答】◯
保証債務は二次的な債務の立場。
催告の抗弁権;保証人は、債務者に対して、先に主たる債務者に催告しろと言うことができる
検索の抗弁権;先に主たる債務者の財産を執行しろと言うことができる
試験のポイント!
保証人と連帯保証人の違いを押さえる。
保証人にしか使えない権利は、絶対に覚えておきましょう。
宅建試験:暗記のポイント
(1)保証債務は主たる債務について、付従性、随伴性、補充性の性質を持つ。
・付従性:債務が消滅すれば保証債権もまた消滅する・随伴性:債権が移転すれば、それに伴って移動する
・補充性:債務に対して二次的な地位(主たる債務者が履行しない場合に、はじめて履行すればよい)
(2)保証人は、催告の抗弁権と検索の抗弁権を有している。
(3)連帯保証人は、催告の抗弁権と検索の抗弁権がなく、また分別の利益をもたない。
分別の利益:債務を数人の保証人で均等割できる利益のこと
(4)連帯債務の絶対的効力事由に6つが定められる
・履行の請求:債務者が1人に対して履行の請求をすれば、他にも請求したことになる。
・更改:従来の債務内容を他の債務内容に変える契約のこと。
・相殺:負担部分の範囲内で自ら相殺することができる。
・免除:債務者の1人が債務を免除されると、他の債務者は残りの連帯債務を負うこと。
・混同:債権者の地位と債務者の地位が同一人になること
・時効の完成:債務者の1人の債務が消滅すれば、他の債務者は残りの連帯債務を負うこと。
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