今回の宅建士の過去問解説は「権利関係:契約の成立、手付金と条件契約」についてです。
この分野の出題は、複合問題で出題されることが多いです。
ここで平成29年度の宅建試験で出題された問題を解いてみましょう!
問題5 (3)
売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。
正しいか誤りか?
契約の成立や解約などの条件は、日常生活でも役立つ知識なので、宅建試験のためだけでなくしっかりと理解しておきましょう!
Contents
宅建の過去問解説:契約の成立条件とは
契約とは、申込みと承諾の2つの合致(合意)によって成立する
この合意だけで成立する契約を諾成契約と呼びます。
売買(不動産も含む)、贈与、請負、委任などです。
黒革の手帳の売買契約は「諾成契約」になります。
また、これ以外に合意だけでなく、物の引き渡しが必要な契約があり、これを「要物契約」と呼びます。
要物契約には、消費貸借、使用貸借(住宅ローン)、質権設定、寄託などがあります。
使用賃借の例として、多くの人は家を購入する時には銀行と住宅ローン契約をします。
購入した家を担保に入れてお金を借ります。ローン残金が支払えなくなると、担保の家を取られます。
契約の申込みと予約
ドラマで物件を買いたいと意志表示した、申込みの効力についてみていきます。
申し込みの効力は3つ決められています。
・効力発生時期:離れた場所にいる人に対しては、相手方に到達した時から効力
(通常は郵便受けに入った時から)(97条1項)
・申込者の死亡・能力喪失
申込みの発信後に、申込者が死亡しても効力がある(同条2項)
・申込みの拘束力承諾期間を定めてした申込みは、その期間中は撤回できない。
ただし、この承諾期間が過ぎれば申込みの効力は失われる(同条2項)
申込みは、相手に意志が到達した時から発生する「到達主義」だと覚えてください。
他に内容を変更した承諾や条件の場合は、申込みの拒絶とともに、新たな申し込みをしたとみなされます。
例えば、2000万の土地を買わないかという申し込みに対して1500万なら買う!などです。
手付金を払い解約する契約の種類
黒革の手帳は、お金が用意できない場合の契約破棄の倍返しのペナルティが重過ぎます。
他に物件を解約する場合の契約方法は無かったのでしょうか?
手付には3つの種類があります。
証約手付(しょうやくてつけ)
契約が締結されたことを示し、その証拠になる手付を証約手付といいます。
どの手付でも、最小限には、この効果があります。
解約手付
手付の額だけ、損をするのを覚悟すれば解約できる手付契約のことです。
不動産の売買契約で使われます。
相手方が履行に着手するまでは、契約の解除ができます。
「履行に着手する」とは、例えばマンションなどであれば、施工工事を始めた段階などです。
相手方に損失が出ない間までは、お互いに解除権を自由に行使できます。
現実の契約の多くが「解約手付」
手付金は当事者の意志で決まりますが、民法では当事者間で取り決めがない場合には「解約手付」と推定されます。
宅建士の試験に出題されるのも「解約手付」です。
違約手付
債務不履行があった場合に、その損害賠償金を支払う目的で、交付される手付のことです。
約束を履行できなかった時は、お互いに損害賠償が請求できる厳しい契約です。
黒革の手帳の契約は、履行できない場合は、手付金の倍返しだったので、「違約手付」の契約です。
この手付の目的は、確実に売買契約を実行させる履行確保の手段として使われます。
条件と期限
契約で覚えておきたいことは期限と条件の違いです。
・条件:その事実が将来確実に発生するかどうか?未定の場合
・期限:その事実が発生することが確実であるもの
条件の場合は、2つの概念があります。
・停止条件:効果の発生をそれまで停止している
(例)結婚したらマンションの贈与をする
結婚するまでマンションは贈与されない
・解除条件:ある事実が生じることにより、法律行為(契約)の効力が消滅
(例)中古マンションを買おうとしてローンを申し込んだが、ローン審査で落ちたので、契約を解除する
宅建の過去問まとめ:契約の成立、手付金と条件契約
過去問解説はいかがでしたか?
民法の契約の成立条件、期限や手付金の解除などは理解できましたか?
宅建過去問の解答
平成29年度 問題6(3):誤り
買主が売主に手付を交付したときは、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約を解除することができる。
したがって、AはCが契約の履行に着手した後は、20万円を償還して、契約を解除することができる。
(参照:「過去問題解説より」)
宅建試験のポイント
(1)売買、賃貸借は諾成契約である。
(2)隔地者間の契約は、承諾の通知が発せられた時に成立する。
(3)手付には、証約手付、解約手付、違約手付がある。
宅建業務では、ほとんど「解約手付」が使われる。
(4)解約手付に基づく解除は、相手方が履行に着手するまでできる。
(5)ある事実が生ずることによって、法律行為(契約)の効力が生ずるものが「停止条件」で、反対に効力が消滅するのが「解除条件」である。
(6)期限の利益は、相手方の利益を害しない限りは、放棄することもできる。
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