今回の宅建士になるための過去問解説は、権利関係の「意志表示」についてです。
意思表示は、宅建士試験で過去10年間に8回以上も出題された重要分野の一つです。
次は、実際に宅建士試験では、どのような問題が出るか?過去問を解いてみましょう。
下記は「正しい」か「誤り」か?
Q1.【平成24年 1問-1項】
Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえた Bの債権者Cは、民法94条第2項の「第三者」に該当しない。
Q2.【平成25年 1問-1項】
意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができる旨、民法の条文に規定されている。
宅建試験の権利関係からは、過去問以外にも難解な民法問題が出ますが、基礎を抑えていれば半分は得点できます。
「意思表示」は、理解すれば解きやすい問題なので、しっかり試験対策を行って下さい!
Contents
契約という法律行為とは?
民法では契約の行為は下記のように定義されています。
契約という法律行為は「申込み」と「承諾」の2つの意思表示が合致することで成立する。
(参照:「2018年パーフェクト宅建 基本書」より)
言い換えれば、当事者間で意志の意思表示の合意があれば、契約内容も当事者同士で自由に決める事ができます。
これを「契約自由の原則」と言います。
意思表示が効力を発生する時期
離れた所にいる者に対する意思表示の効力は、その通知が相手方に到達した時に生じます。
これを民法上の到達主義の原則といいます。
承諾の通知を発信した時に成立します。
意志の不存在(ふそんざい)は無効
契約が有効にならない意志の不存在には3つ種類があります。
・心理留保
・虚偽表示
・錯誤
心裡留保(しんりりゅうほ)
心裡留保とは、表意者が真意でないことを知りながら意思表示をすることです。
冗談や嘘も心裡留保に含まれます。
例えば、酒の席で取引先が内心は取引をする気も無いのに、酒の席のノリで「取引成立!」と冗談を言った場合などです。
原則としては心裡留保であっても、契約は有効とされています。
なぜならば、表示を受けたあなたは、相手が嘘を言ったとは、通常は思わないので、言われた側を保護するために有効としています。
しかし、心裡留保が全面的に有効になるのではありません。
相手方が表意者の真意を知り、または知ることができた時は無効。
(参照:「2018年パーフェクト宅建 基本書」より)
虚偽表示
2つ目の虚偽表示とは、相手方と通じて真意ではない意思表示をすることです。
相手方と通謀して行う虚偽の意思表示を虚偽表示または(通謀虚偽表示)といいます。
代表的な例として下記のような「仮装譲渡」があります。
土地の売買でAは、その所有する甲土地を譲渡する意志が無いのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。
(参照;平成27年 2問-1項 宅建士の過去問より)
虚偽表示は、基本的に無効です。
しかし善意の第三者に対しては、契約の無効を主張できず、約束した契約は有効になります。
善意とは、虚偽表示であることを知らない人の事を指します。
その善意の人が、第三者の立場で仮装譲渡された土地を買う場合です、
登記なども不要で、仮に第三者に過失があっても認められます。
下記が第三者に該当する人です
・仮装譲渡された土地を買った者
・仮装譲渡された土地に抵当権の設定を受けた者
・仮装の抵当権者から転抵当権の設定を受けた者
・仮装譲渡の譲受人
転抵当権とは、抵当権者が自分の債務の担保となっているものを、更に他の債権の担保にすることです。
【試験のポイント】
・土地の仮装譲受人に金銭を貸し付けただけの債権人は第三者ではない。
・しかし、その債権人が仮装譲渡された土地を差押えすると第三者になる。
「債権者」⇨「差し押さえする人」になれば、第三者になるので、契約は有効になります。
錯誤
3つ目の錯誤とは、表示から推測される意思と真実の意思が食い違っているのに、表意者がそれに気がついていないことです。
ポイントは、実際に行う行為自体に錯誤がないと該当しません。
意思表示は、法律行為の要素(重要部分)に錯誤があったときは無効とする。
(民法第59条)
無効とする理由は、錯誤に陥った表意者を保護するためです。
しかし、表示者に「重大な過失」があった場合は、法律行為の要素に錯誤はあっても無効を主張できず、契約は有効になります。
動機の錯誤
そして問題になるのが、「動機の錯誤」の契約も有効になるか?です。
この動機の錯誤とは下記のような例です。
来年に駅が建設される予定なので、周辺の土地の価格が上がると見越して、不動産業者は土地を買い占めたが、実際は駅が建設されなかった。
土地の価格が上がると思って購入したので、もしそうならない場合は損をするので、土地の売買契約は無効にできるか?
この場合は、もし駅の建設元、鉄道会社などが駅ができると広告などで表示していた場合は、契約は無効にできます。
しかし、不動産業者が勝手に心の中で勘違いしていた場合は契約は有効になり、取り消しにはできません。
原則、動機による錯誤は、行為ではないので、無効を主張することはできません。
しかし、動機が表示されて意思表示の内容になった場合に限り、法律行為の錯誤になり得ます。
この動機の表示は、明示的なものだけでなく、黙示的なもの(暗黙の了解)も含まれます。
詐欺と強迫による意思表示は取り消しになる
詐欺による意思表示とは、騙されて勘違いしたまま行う事。
強迫による意思表示とは、強迫されて怖くなり、やむを得ず行う事で、この2つは後から取り消すことができます。
詐欺による意思表示は取り消すことができ、善意の第三者には対抗できません。
また、民法では、強迫された人を保護するため、強迫による意思表示は取り消すことができる。
そして強迫による意思表示の取消しは、詐欺により意思表示の場合とは反対に、善意の第三者に対しても対抗できる。
【宅建試験のポイント】
宅建過去問まとめ「意思表示」
契約の意思表示については、整理できましたか?
宅建過去問の解答
Q1.【平成24年 1問-1項】
Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえた Bの債権者Cは、民法94条第2項の「第三者」に該当しない。
【解答】✖
・土地の仮装譲受人に金銭を貸し付けただけの債権者は第三者には該当しない。
・しかし、その債権者が仮装譲渡された土地を差し押さえすると第三者になり、法律は有効になる
ポイント!
債権者が土地を差し押さえると第三者になると覚える。
仮装譲渡は善意の第三者の契約は有効になる!
Q2.【平成25年 1問-1項】
意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、表意者は、その意思表示を取り消すことができる旨、民法の条文に規定されている。
【解答】✖
・「錯誤があった場合は、取り消すことができる」とは、民法の条文には規定されていない。
・「意思表示は、法律行為の要素があったときは、無効とする」と民法の条文では規定されている
ポイント!
民法は、どんな法律行為で規定されるまで正確に覚える!
「錯誤があった場合は全て取り消すことができる」となると、動機の錯誤の場合も含め、全ての錯誤が、有効になってしまうので意味が変わる。
宅建試験のポイント「意思表示」
(1)心理留保は原則有効。虚偽表示は無効だが、その無効をもって善意の第三者には対抗できない。
錯誤は要素に錯誤があれば無効である。
(2)強迫・詐欺による意思表示は、無効ではなく、取り消すことができる。
(3)詐欺による意思表示は、その取り消した結果を、善意の第三者には主張できない。
(4)強迫による意思表示は、常に取り消すことができる。
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