前回の借地借家法の「借地権」に引き続き、今回の宅建士になるための権利関係の過去問解説は「借家権」の1回目です。
「借地権」と「借家権」の違いはわかりますか?
「借地権」:建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のこと
「借家権」:建物、特に借地借家法の適用を受ける建物の賃借権のこと
同じ賃借権の権利だと混同しやすいですが、「借地権」は土地、「借家権」は建物である事が違います。
「借地借家法」の適用を受ける「借家権」も毎年、宅建士試験で出題される最重要事項です。
ここで平成29年度の宅建士の問題です。
Aが所有する甲建物をBに対して3年間賃貸する契約をしていた。
Cが甲建物を適法に転貸している場合、AB間の賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、Cがその旨をBから聞かされていれば、AはCに対して、賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。
正解か誤りのどちらでしょうか?
転貸とは、人から借りた物をさらに他人に貸す(又貸し)。また、転借とは、人の借り物をまた借りること(又借り)のことです。
BはAから建物を借りていて、更にCへ転貸している関係ですが、今回は、Aから転借人のCに対して期間満了の契約が有効であるかどうか?の問題です。
上記のように、自分が借りているマンションを旅行者などに短期間、貸し出す民泊業なども、転貸に該当します。
最近、特に外国人相手に民泊を行う転貸は、近隣住民へのトラブルなどの問題を引き起こしています。
借地借家法からみると、この転貸の民泊業は違法でしょうか?
今、ホットな話題と絡めながら、宅建士試験の必修項目、借地借家法の借家権をマスターしてください。
Contents
宅建の過去問解説:借家権とは
民法では、建物の賃貸借については特別法で制定され、賃貸借関係の適切な規律と賃借人の保護を図っています。
それが借地借家法の借家に関する規定です。
借家権とは
借家権というのは、広くは建物の賃借権のことをいうが、通常は、借地借家法の適用を受ける建物の賃借権のことをいう
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
また借地借家法が適応されない事例は
・間貸しのように、その室自体に独立性がない場合
・一時使用のための建物の賃貸借
借家権の存続期間(契約期間)
契約で最短期間の定めはないです。
しかし、1年未満の期間を定めた場合は、定期建物賃貸借を除き、期限の定めがない契約とみなされます。
また、期間満了前1年から6ヶ月前までの間に、借家人に対して退去の予告をしなければ、更新の拒絶ができず、従前と同一の条件で更新されることになります。
このような更新を法定更新といい、更新後の借家契約は、期限の定めがないものとされます。
借家人にとって不利な特約は、基本的に無効です。
民法の賃貸借はその存続期間が20年を超えることはできない規定がありますが、建物の賃貸借には適応されません。
20年を超える賃貸借契約も締結することができます。
契約期間の定めがない場合
家主はいつでも解約の申入れをすることにできる。
しかし、そのためには正当事由が必要です。
解約は、6ヶ月が経過しないとできません。
正当事由が認められると借主は出て行く必要がありますが、6ケ月間は居住し続けることができます。
もし、そのまま住み続けて家主が何も言わなければ、そのまま契約は更新されたものとなります。
逆に借家人(借りている側)が止める場合は、いつでも解約の申し入れはできます。
正当事由は不要で、3ヶ月が経過すれば、解約は有効になります。
正当事由の判断基準
存続期間の定めがある借家契約について、地主が更新を拒絶、または、期間の定めがない借家契約について解約の申入れをする場合は、正当な事由が必要です。
「正当な事由」としての考慮要素は
・建物の使用を必要とする・賃貸借に関する従前の経過
・利用状況及び建物の現況
・立退料を申出
また、この場合は、転借人の有無も考慮されます。
例えば、BがCへ転貸した場合、転借人であるCの事情も考慮されます。
よって、序文の問題で、転借人が賃貸借契約の期間満了を受け入れられない事情がある時は、明渡しの時期に関しては、考慮されます。
借家権の対抗力
登記がなくても建物の引渡しさえあれば、成立します(第三者へ対抗できる)。
しかし、借家権は、建物が滅失すれば、目的物の建物が存在しなくてなるので、消滅します。
定期借家契約(定期建物賃貸借契約)等
借地権でも出てきましたが、定期借地契約については、覚えていますか?
定期借地権には、3つの「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付き借地権」がありました。
ここで出てくる「定期借家契約」は、「一般定期借地権」と一部内容が似ているので、混同しないでください。
定期借家契約とは
定期借家契約の意義とは、
建物の賃貸借で、貸主と借主が、あらかじめ合意した契約期間が満了した場合、更新がなく、必ず契約が終了する旨の契約をいう。この契約に基づく借主の権利が定期借家権である。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
定期借家の契約期間は、最短、最長ともに何か月でも何年でも制限はありません。
一般定期借地権の場合は、存続期間を50年以上に設定していたので、ここが借地権とは違います。
定期借家契約の要件
「一般定期借地権」と同様に定期借家契約も公正証書その他の書面による契約が必要です。
この場合の公正証書は例示です。
何らかの書面であれば、公正証書以外の書面でも構いません。
また、賃貸人(大家)は、あらかじめ、その賃貸借は更新がなく、期間の満了により終了する旨を、賃借人に対し、書面を交付して説明する必要があります。
説明がない場合は、賃借人に対抗することができません。
契約終了時の通知
期間が1年以上の定期借家契約には、賃貸人は期間満了の1年前から6カ月前までの間に、契約が終了する旨を通知しなければなりません。
この通知をしなかったときは、通知の時から6カ月を経過するまで、契約の終了を行うことができません。
賃借人の中途解約
居住用建物の定期借家契約では、賃借人が転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事由により、自宅としての使用が困難な場合は、1カ月前の予告期間で解約の申し入れができます。
ただし床面積200㎡未満に限られます。
また事業用建物の賃借人は、この中途解約はできません。
取り壊し予定の建物の賃貸借権
明らかに取り壊すことがわかっている場合は、「その時期に終了する」と決める契約が、できます。
例えば、近い将来に計画道路の拡張工事で、計画的に建物の取り壊しが決まっている場合などです。
ただし脱法的な契約を防止するために、契約は書面によって行うことが決められています。
借家権の譲渡・借家の転貸
家主の承諾がある場合とない場合によって変わります。
家主の承諾がある場合
家主の承諾がある場合は、譲渡・転貸ができます。
またこれは、暗黙の了解の場合でも差し支えはないです。
譲渡の時は、新借家人が旧借家人の権利義務を一切包括的に承継します。
転貸のときは、家主と借家人との関係はそのまま継続し、家主と転借人との間に(借家人が入るので)直接何の関係も生じません。
しかし、民法では、「転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う」と規定しており、転貸人も直接に家賃支払いの義務は負います。
ただ、家主が転貸人に対して、直接、権利を行使することはできません。
家主の承諾がない場合
家主に無断で譲渡・転貸し、建物を第三者へ使用されたときは、家主は、賃貸借契約を解除することができます。
借地権で認められていた貸主(地主)の承諾に代わる裁判所の許可は、借家の場合では認められていません。
この理由は、借地権と違い、借家権の方は家主が承諾しなくても、借家人が困ることはないだろうと判断されているからです。
「借家権1」まとめ
借家権の内容は、いかがでしたか?
過去問の解答
問題の答えは誤りです。
建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、
建物の賃貸人は、建物の転貸人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない(同法34条1項)。
賃借人だけでなく転借人にも通知をしなければ対抗することができない。
(参照:【平成29年 問12項3】過去問解説より)
賃借人だけでなく、転借人にも通知していないと契約は終了できません。
借地権と似ているので、混同してしまいそうですが、
下記の違いは、宅建士試験に出ます。
権利関係をスムーズに理解するためには、下記の講座がおすすめです。
宅建試験の合格者が紹介する、おすすめの通信講座の記事を読んでみて下さい。
※ 参考記事:宅建の通信講座はユーキャンが本当におすすめか?宅建受験生が口コミを検証
ユーキャンは実績30年、平成28年度の宅建士の合格者数は1,534名、全国でもNo1です。
またユーキャンも「教育給付金」の指定講座なので、条件を満たせば受講料の20%が戻ってきます。
借地借家法でみる民泊は法律違反であるか?
家主に無断で貸す場合は、家主が賃貸借契約を解除することは認められています。
民泊は家主が拒否すればできません。
また、借地借家法以外の別の法律「旅館業法」に基づく許可、「特区民泊」に基づく認定がないものは違法民泊になります。
そして2018年に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)に適応した届出申請が必要です。
またマンションの規約で民泊が禁止されている場合は、規約に従う必要があります。
規約違反で勝手に宿泊させると、民泊業務が停止させられます。
実際に裁判で民泊差し止めの判決が下されました。
東京都港区のマンションで管理規約を改正して「民泊」を禁止した後も民泊行為を続けているとして、管理組合が部屋の所有者に中止を求めた訴訟で、
東京地裁(浦上薫史裁判官)は10日までに、民泊の差し止めと弁護士費用の支払いを命じる判決を言い渡した。
(参照:日本経済新聞 2018年8月10)
引き続き「借家権2」では、宅建士試験でよく出題される項目を説明します。
「修繕義務」や「敷金」などの賃貸物件を借りた時に起こる問題もわかるのでお見逃しなく!
* 次回の記事「宅建士になるための過去問解説【権利関係】借家権2。敷金と家賃交渉を有利にする方法とは?!」
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