今回の宅建士になるための「税・その他」の過去問解説は「住宅取得等資金の贈与の特例」についてです。
自宅を取得するにあたり、親からの資金援助を受けることがあるが、それに対しては贈与税が課されます。
その場合、贈与を受けた財産が住宅取得等資金であると贈与税の特例があります。
ここで平成27年度の宅建試験で出題された過去問題を解いてみましょう!
問題23
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の「贈与税の非課税」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか?
1)直系尊属から住宅用の家屋の贈与を受けた場合でも、この特例の適用を受けることができる。
2)日本国外に住宅用の家屋を新築した場合でも、この特例の適用を受けることができる
3)贈与者が住宅取得等資金の贈与をした年の1月1日において60歳未満の場合でも、この特例の適用を受けることができる。
4)受贈者について、住宅取得等資金の贈与を受けた年の所得税法に定める合計取得金額が2,000万円を超える場合でも、この特例を受けることができる。
Contents
贈与税の概要
贈与税とは、国が、贈与財産の取得に対し、受贈者に課税する税金のこと。
暦年課税
暦年課税(れきねんかぜい)は、原則的な課税方法。
一暦年中に贈与を受けた全ての財産に対して、その受贈者に贈与税を課すもの。
相続時精算課税
相続時精算課税は、暦年課税に代えて選択適用する課税方式。
その選択適用は、受贈者が、贈与者である父、母、祖父、祖母ごとに行い、一度選択した場合、一生撤回できなくなる。
下記の要件を満たし、受贈者の選択届出があるときに限り、適用することができる。
贈与者 | 「父」「母」「祖父」「祖母」(60歳以上) |
---|---|
受贈者 | ・将来の相続人である「子供」「孫」(20歳以上) ・相続時精算課税適用者または適用予定者 |
物の要件 | 制限なし |
相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例
下記の場合は、「相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例」が受けられる
平成15年1月1日〜平成33年12月31日に父、母、祖父、祖母から金銭の贈与を受け、一定期間内にその金銭をもって住宅等を取得し、居住の用に供した場合。
この特例では、贈与者の年齢制限が除外される。
適用要件
贈与者 | 年齢制限なし |
---|---|
受贈者 | ・将来の相続人である「子供」「孫」(20歳以上) ・相続時精算課税適用者または適用予定者 |
種類 | 「金銭」 |
使途 | ・受贈年の翌年3月15日までにその「金銭」の全額を次の対価に 充当し、同日までに居住の用に供すること ・一定の住居の新築または取得の対価 ・現に所有かつ居住している住宅の一定の増改築等の対価 ・これらとともにする敷地の取得(住宅の新築に先行してする敷地の |
受贈者は、所得が高い者、かつて居住用家屋を所有していた者、既にこの特例の適用を受けている者であっても差し支えない。
一定の住宅または一定の増改築等とは、次の要件を満たすもので、その床面積の2分の1以上がもっぱら居住の用に供されるもの。
適用要件【住宅】
床面積 | 50㎡以上(上限なし) |
---|---|
築年数 | 中古住宅にあっては、 ・築20年(耐火建築物25年)以内 ・または一定の耐震基準に適合 |
価 格 | 「制限なし」 |
その他 | ・配偶者等からのものを除く |
適用要件【増改築等】
床面積 | 増改築等後の床面積が50㎡以上(上限なし) |
---|---|
規 模 | 一の工事費用が100万円以上 |
その他 | ・配偶者等からのものを除く |
住宅取得等資金贈与の非課税特例
下記の要件を満たし、贈与を受けた年の合計取得金額が2000万円以下の者に限り「住宅取得等資金贈与の非課税特例」が受けられる。
平成27年1月1日〜平成33年12月31日に直系尊属(父、母、祖父、祖母など)から金銭の贈与を受け、一定期間内にその金銭をもって一定の住宅等を取得し、居住の用に供した場合。
適用要件
贈与者 | 直系尊属(「父」「母」「祖父」「祖母」など) |
---|---|
受贈者 | ・直系卑属「子供」「孫」(20歳以上) ・受贈年の合計取得金額が2,000万円以下 |
種類 | 「金銭」 |
使途 | ・受贈年の翌年3月15日までにその「金銭」の全額を次の対価に 充当し、同日までに居住の用に供すること・一定の住居の新築または取得の対価 ・現に所有かつ居住している住宅の一定の増改築等の対価 ・これらとともにする敷地の取得 (住宅の新築に先行してする敷地の取得を含む)の対価 |
【一定の住宅】とは、
相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例における一定の住宅、かつ床面積が50㎡以上240㎡以下であるもの。
【一定の増改築】とは、
相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の特例における一定の増改築等と同じ
増改築後の床面積が50㎡以上、その工事費用が100万円以上のもの
過去問の解説「住宅取得等資金贈与の特例」
序文の解答と解説です。
問題23 正解:3
(1)誤り
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例における「住宅取得等資金」とは、住宅の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭をいうとされ、住宅用の家屋そのものは含まれない。
したがって、この特例は受けられず誤り。
(2)誤り
この特例における「住宅用の家屋」とは、受贈者の居住の用に供する相続税法の施行地内にあるものとされ、さらに、相続税法の施行地は、本州、北海道、四国、九州及びその付属の島とされている。
したがって日本国外の住宅用家屋についての適用は受けられず誤り。
(3)正しい。正解。
この特例では、直系尊属である贈与者については年齢制限なく適用を受けることができる。
なお、一般的な相続時精算課税制度については贈与者が60歳以上であること、との要件が付されている。
(4)誤り。
この特例の適用を受けるには、住宅取得等資金の贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が、2,000万円以下でなければならず、それを超えても特例の適用を受けることができるとするのは、誤り。
(引用:パーフェクト宅建「過去問10年間」【平成27年 問23】過去問解説より)
いかがでしたか?下記の「試験のポイント」を整理して覚えてください。
試験のポイント:住宅取得等資金の贈与の特例
・贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税とがある。
・相続時精算課税の贈与者は、60歳以上の父、母、祖父、祖母に限られる。
・相続時精算課税の受贈者は、20歳以上の子、孫に限られる。
・相続時精算課税は、贈与者1人当たりで累計2,500万円の特別控除がある。
・相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の贈与者である父、母、祖父、祖母には、年齢制限がない。
・相続時精算課税は、父、母、祖父、祖母それぞれの贈与について各別に適用することができる。
・相続時精算課税の住宅取得等資金贈与の受贈者である子、孫は、所得が高い者、かつて居住用家屋を所有していた者、既にこの特例の適用を受けている者であっても構わない。
・非課税の住宅取得資金贈与は、暦年課税の基礎控除(110万円)または相続時精算課税の特別控除(2,500万円)と合わせて適用することができる。
・非課税の住宅取得等資金贈与は、受贈者の所得要件が2,000万円以下である。
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