今回の宅建士になるための過去問解説は、「報酬に関する規制」についてです。
業者が買主に、不当に高額な報酬を要求することがないように、報酬額の上限や提示義務の規制が設けられています。
ここで平成29年度の宅建士試験で出題された「報酬の規制」の過去問を解いてみましょう。
問題26
宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は貸主Bから建物貸借の媒介の依頼を受け、宅地建物取引業者C(消費税課税事業者)は借主Dから建物の貸借の媒介の依頼を受け、BとDの間での貸借契約を成立させた。
この場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか?
なお1ヶ月分の借賃は9万円(消費税等相当額を含まない)である。
1)建物を店舗として貸借する場合、当該賃貸借契約において200万円の権利金(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいい、消費税等相当額を含まない。)の授受があるときは、A及びCが受領できる報酬の限度額の合計は21,600円である。
正しいか誤りか?
早く解答を知りたい人は こちら→「過去問の解説:報酬に関する規制」
Contents
過去問解説【宅建業法】業務 ―報酬に関する規制
報酬に関する問題は、ここ10年間、毎年出題されています。
計算問題が解ける必要もあるので、本文で消費税8%の計算方法にも慣れていきましょう!
報酬額の制限、報酬と消費税の関係、規制などがポイントです。
報酬額の制限
<業者間取引にも適用>
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる(法46条1項)。
宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない(2項)。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
売買・交換の媒介の場合
依頼者の一方から受けられる報酬の限度額(消費税額を含む)は、物件の価格を下記のように区分する。
それぞれの率を乗じて得た額の合計額である。
物件の価 額 | 消費税込の率 | 基本の率 |
---|---|---|
イ)200万円以下の部分 | 100分の5.4 |
100分の5 |
ロ)200万円を超え400万円以下の部分 | 100分の4.32 | 100分の4 |
ハ)400万円を超える部分 |
100分の3.24 |
100分の3 |
消費税の取扱い | 消費税額込みの表示 | 上記で算出した額に 消費税額(1.08倍) を乗じる |
<計算式>
1,000万円のうち
* (イ)+(ロ)+(ハ)=10万8,000円+8万6,400円+19万8,000円
=38万8,800円(報酬の限度額)
売買・交換の代理の場合
依頼者(本人)から受けられる報酬の限度額は、「媒介の場合に計算した額」の2倍以内とされる。
ただし、売買・交換の相手方から報酬を受ける場合は、その報酬額と代理の依頼者から受ける報酬の合計額がこれを超えてはならない。
代理の場合は「媒介の場合に計算した額」の2倍以内とされる
<計算式>
38万8,800円 × 2 =77万7,600円(報酬の限度額)となる
貸借の媒介の場合
依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額
借賃(使用借賃の場合は、通常の借賃)の1ヶ月分の1.08倍以下。
この場合に、居住用建物の賃貸者の媒介の場合
依頼者の一方について、借賃の1ヶ月分の0.54倍以下(半月分以下)
貸借の代理の場合
借賃(使用借賃の場合は、通常の借賃)の1ヶ月分の1.08倍以下。
ただし、貸借の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬額の合計額が、借賃の1ヶ月分の1.08倍を超えてはならない。
権利金の授受がある場合の特例
賃貸借(居住用建物の賃貸者を除く)の代理・媒介の場合
権利金の授受があれば、その権利金を売買の代金とみなし、手数料として計算できる。
「売買・交換の媒介の場合」または「売買・交換の代理の場合」での計算方法おによることができる。
上記の規定によらない報酬の受領禁止
宅地建物取引業者は、宅地建物の売買・交換・賃借の代理・媒介に関して、上記の規定によるほかは、報酬を受けることができない。
ただし、依頼者の特別の依頼による特別の費用(例えば、広告の費用や遠隔地への交通費等)については、事前の承諾があれば、別途、受領することができる。
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
当事者のそれぞれに異なる宅建業者が介在しても、1つの取引に係る報酬の限度額は同じ。
依頼者が好意的に限度額を超えて支払った場合でも、これを受領すれば違反になる。
報酬と消費税との関係
土地の売買については消費税は課税されない。
(土地の取引の代理・媒介報酬には消費税が課税される)
建物売買については消費税は課税される。
取引代金の額
取引代金の額は、本体価格(税抜価格)が基礎となる。
(例)
土地の取引代金 2,000万円
建物の取引代金 1,080万円
消費税抜きの価格 2,000万円+1,080万円 × 100/108 = 3,000万円
この額が報酬の算定額になる。
宅建業者が課税事業者である場合
従来の限度額に当該媒介報酬に課せられるべき消費税相当額を加えた額を依頼者に請求することができる。
(例)
報酬の限度額(消費税抜き)が126万円とした場合、消費税課税事業者はこれに8%を加えた額を請求することができる。
126万 × 1.08=136万800円
また、免許事業者は、8%の40%である3.2%を報酬に加算できる。
(例)
126万 × 1.032=130万320円
過去問の解説「報酬に関する規制」
報酬に関する計算方法は、理解できましたか?
序文の問題の解答です。
問題26 (1)
正しい。
賃貸借(居住用建物の賃貸借を除く)の代理・媒介の場合に権利金(その名義のいかんを問わない)の授受があるときは、その権利金を売買の代金とみなして計算することができる。
したがって、200万円 × 5% =10万円。
10万円 ×1.08 (消費税)=10,800円。
A及びCが受領できる報酬の限度額の合計は21,600円である。
(参照:【平成29年 問26項1】過去問解説より)
暗記のポイント「報酬に関する規制」
1)宅建業者は、依頼者の特別の依頼によるものではないときに、広告費等を受領することができない。
2)仮に、1つの取引に数人の宅建業者が介在したとしても、報酬額の限度を超えることができない。
3)売買・交換の媒介の場合、依頼者の一方から受けられる報酬の限度額
物件の価 額 | 消費税込の率 | 基本の率 |
---|---|---|
イ)200万円以下の部分 | 100分の5.4% |
100分の5% |
ロ)200万円を超え400万円以下の部分 | 100分の4.32% | 100分の4% |
ハ)400万円を超える部分 |
100分の3.24% |
100分の3% |
4)交換物件の価額に差があるときは、高いほうの価額を基準として報酬額を計算する。
5)居住用建物の賃貸借の媒介の場合、依頼者の一方から受領できる報酬額は、原則として借賃の1ヶ月分の0.54倍以下である。
6)宅地または非居住用建物の権利金の授受がある場合は、権利金を売買代金とみなして報酬を請求できる。
7)報酬額(税込価額)は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲示しなければならない。
8)不当に高額な報酬の要求をすることは、受領しなくても要求行為だけで宅建業法違反となる。
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