前回の宅建士になるための権利関係の過去問解説「「用益物権1(地上権)」に引き続き、今回は、2つ目の記事「用益物権2(地役権)」についてです。
ここで問題です。
あなたの家は、道路(公道)から隣人の土地より奥にあります。
毎日あなたの家族は、何十年も隣地の敷地の通路を通過して公道に出ていました。
ところが隣地の持ち主が、相続で変わりました。
そして相続人は、突然、自分の敷地を通らないで欲しいと言い出しました。
理由は、あなた達が今まで使っていた通路は、隣人の所有地だからです。
通路が使えないと道路に出れないので、その場所では生活ができません。
さて、通路部分の土地だけを引き続き通行で利用できるように、隣人と交渉できるのでしょうか?
上記の他人の土地を使う場合の問題は、過去の宅建士試験に何度も出題されています。
私道の通行を有効にするためには、どうすれば良いのか? 一緒に考えながら地役権を理解していきましょう!
Contents
宅建過去問解説:用益物権とは
何らかの目的で、他人の土地を利用させてもらう権利のうち、民法で物権とされているものを「用益物権」(ようえきぶっけん)といいます。
前回の記事でも書きましたが、用益物権は4種類ありましたね。
・地上権
・地役権
・永小作権
・入会権
* 前回の記事:「宅建士になるための過去問解説【権利関係】用益物権1(地上権) もし急に住んでいる家の土地を返せと言われたら!?」
この中で宅建試験に最も出題される重要な権利は「地上権」と「地役権」です。
前回の「用益物権1」では、土地を自由に使用する権利「地上権」を学びました。
今回の隣地の通路問題は、現実の世界でも問題になることが多い地役権の代表的な事例です。
地役権とは
その設定契約で定められた目的、例えば通行、引水などの目的に従って、自己の土地の便益(「便利」のこと)のために、他人の土地を利用する権利のことである
(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)
地役権で押さえておきたいのは、2つの土地の種類です。
・承役地(しょうえきち):利用される側の土地
・要役地(ようえきち):他人の土地を利用することが必要な土地
これら2つの土地は、必ずしも隣接している必要はありません。
そして承役地の通路として使われる部分が、地役権になります。
今回の場合を下記で説明します。
要役地と承役地の性質
要役地は、通路を利用することが必要である、あなた土地の事です。
地役権は、要役地のために存在する権利です。
地役権の目的である要役権の便宜は、何らの制限はありません。
主な地役権の例は、通行のため、引水のため、送電線を通す、などがあります。
これらは、下記の性質を持っています。
附従性、随伴性
地役権は、要役地が移転すると一緒に地役権も移転します。
よって地役権を要役地から分離する、また別の物として、他の権利の目的とすることはできません。
不可分性
地役権は、要役地の持ち主の利益のために承役地の中に存在します。
よって要役地と承役地は共有のものである、と考えられます
よって承役地の共有者の一人が、承役地の上に存する地役権を消滅させることはできません。
時効に関しても同じ
共有者の一人が、時効によって地役権を取得した場合は、他の共有者も同じように地役権を取得します。
共有者に対する時効の中断は、地役権を行使する各共有者に対しても行わなければ、その効力は生じません。
これらの法律の目的は、なるべく地役権を存続させたいからです。
地役権の種類と取得方法
それでは、地役権の種類と、地役権を取得するための条件と方法をみていきましょう。
地役権の種類
地役権は4つに分類できます。
・継続地役権:間断なく、継続して使用
・不継続地役権:権利の行使に間断がある(通路を遮るなど)
・外形上認識できる地役権:道路や引水など外形的事実がある
・外形上認識できない地役権:何もしないなど不作為、外部から認識できない
地役権の時効の取得
地役権は、通常は地役権の設定契約によって取得されます。
他にも譲渡、相続のほかにも、時効や遺言によって取得される場合もあります。
序文の隣地の通路を使うことを通行地役権といいます。
そして特に民法では、時効による取得という特別な規定があります。
これは、あなたが時効により通行地役権を得ることができる事です。
この時効の取得が使える条件は2つあります。
・継続的に使用されている
・外形上認識できるものに限る
承役地の通路を使用している、あなたの場合は、継続的に使用され、外形上、通路と認識できる2つの条件に当てまります。
よって時効による取得が成立します。
成立時期
・善意・無過失の場合には10年間
・悪意の場合には20年間
何十年も通路として使用しているので、時効は成立します。
また、地役権は、もし地役権者が20年間、その権利を行使しない時は、時効によって消滅します。
これは、あなたが通路を使わないと権利は消滅してしまうことを意味します。
時効取得を実行できる人
通行地役権について時効を取得するためには、通路の開設が、要役地の所有者(あなた)によってなされていることが必要です。
承役地の所有者が好意的に設けた通路は、時効取得には該当しません。
宅建士過去問まとめ:地役権
以上、地役権について理解できましたか?
序文の問題の解説です。
他人の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
しかし、この場合には、通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
(参照:【平成25年 問3-1項】過去問解説より)
あなたの通行権は守られますが、自由に通行する土地を選べる訳ではありません。
更に地役権は時効によっても取得することができます。
地役権は、継続的に行使され、かつ外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
(参照:【平成25年 問3-4項】過去問解説より)
地役権の時効は、要役地(あなた)によって通路の開設がされる必要がある点も忘れないで下さい。
次回の記事は、用益物権3では、残り2つの「永小作権」と「入会権」についてです。
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