宅建士の過去問解説【請負】完成直後の建物が天災で大被害の場合の支払いは?!

テスト

前回に続き、宅建士の過去問解説の権利関係「贈与・請負・委任」の2回目は、「請負」についてです。

ここで、震災など予測できない天災で実際に起きた問題です。

建物が完成した直後に、地震で建物が破損してしまいました。

この場合の修理代は、注文者か工事請負業者のどちらが負担するのでしょうか?

解答を先にみる

請負の問題は、平成29年度の宅建士試験にも出題されています。

最近も関西の北大阪地域で地震が起こり、気象異常で災害も各地で起こっています。

今後、不動産を新築予定の人はリスク管理の為に絶対に知っておくとよいです。

また不動産取引に限らず、商売を行う場合でも必要な知識です。

請負契約の基礎が学べるので、建築工事を予定する人も絶対にお見逃しなく!

宅建士の過去問解説【請負】完成直後の建物が天災で大被害の場合の支払いは?!

請負とは、

請負とは、

当事者の一方(請負人)が相手方(注文者)にある仕事を完成することを約束していることです。

これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束する契約のことです(632条)

(参照;「パーフェクト宅建 基本書」より)

請負契約は、双務契約、有償契約ですが、諾成契約でもあります。

契約成立は、口頭でも成立するので、双方の契約書の作成は必要ありません。

しかし、実務では後で揉めないように、契約は書類で交わすことが多いです。

請負人の仕事完成義務

請負人は、仕事を完成する義務を負います。

完成すべき仕事の内容は、契約内容や仕事の性質によって決まります。

仕事の特約や性質上、自分ではできない内容のものは、第三者の労務によって完成してもよいものとされています。

請負人の目的物引渡義務

建物の建築請負のような物の製作についての請負においては、請負人は完成した目的物を引き渡す義務を負います。

目的物の所有権の帰属

序文の問題になれば下記のことが気になります。

・完成した直後の目的物の所有権は、どちらに帰属するのか?

・その移転時期は何時なのか?

過去の判例では、基本的には「材料の支給者」によって分けます。

特約がない限りは、

・材料の全部または主要な部分を注文者が供給した場合:はじめから注文者へ帰属

・材料の全部または主要な部分を請負人が供給した場合:工事中は請負人に帰属

完成と同時に、引き渡しによって 請負人 ⇒ 注文者へ移転

ただし、請負代金が、完成前に完済された場合は、引き渡しを待たずに完成と同時に、はじめから注文者に所有権が帰属します。

序文の問題では、材料をどちらが支給していたか?また、引き渡しや請負代金が地震前までに完済されていたか?によって変わります。

もし、請負人支給の材料で、引き渡し前で代金が完済ならば、所有権は請負人にあります。

請負業者が、工事を請け負う時に賠償責任保険に加入するのは、このように、責任を問われるリスクがあるからです。

平成7年に起こった「阪神・淡路大震災」では、兵庫県地区を中心に多くの建物が震災の被害を受けました。

私が知っていたある不動産業の社長は、引き渡し後のオープン直前の5階建て新築ビルが破損してしまい、億の借金だけが残る悲惨な結果になりました。

この時期は、多くの保険会社の契約では、地震による免責条項等から、阪神淡路大震災レベルの大地震には、想定外の災害扱いで損害保険料は支払われない状態でした。

請負人の担保責任

もし、依頼した成果品に瑕疵がある場合には、注文者は、請負人に対して瑕疵の補修請求をすることができます。

その補修の代わりに、または補修とともに損害賠償を請求することも可能です。

例えば、瑕疵が重大で、建替えるしか他に方法がない場合などです。

瑕疵の代わりに、建替えに要する費用相当額の損害賠償の請求をすることもできます。

更に注文者は、瑕疵が原因で、契約の目的を達成できない場合は、売買契約の場合などは、契約の解除を行うことができます。

ただし、建物、その他土地の工作物などは、どんなに重大な瑕疵があっても契約の解除はできません。

その理由は、解除とは、契約関係をはじめにさかのぼって消滅させることです。

よって建築工事の請負契約の解除を認めれば、結局は完成された建物を壊す行為になります。

これを認めると請負人に大きな損失を被らせるのと、完成した建物を取り壊す行為は、社会経済上の損失と考えられているからです。

また請負人の担保責任は、瑕疵が、注文者による原因の場合には発生しません。

例えば、注文者が与えた材料、指図の不適切さが原因で生じた場合などです。

ただし、請負人が、注文者の与える材料や指示が不適切であると知りながら、注文者に告げない場合は、責任を負うことになります。

存続期間

注文者が目的物の引き渡しを受けてから、どれぐらいの期間であれば、請負人の担保責任は認められるのでしょうか?

下記は、1年以内に行う必要があります。

・瑕疵補修請求

・損害賠償請求

・契約解除

建物の担保責任は、もっと長いです。

・土地の工作物の請負人の場合:引き渡しの後の5年間は担保責任あり

・石造、土造、レンガ造、コンクリート造、金属造の工作物は10年間

特約

担保責任の一部、または全部を負わない旨の特約は、一般的に有効です

特約があっても適用されない場合

請負人が知っていてこれを注文者に告げない事実があれば、担保責任を免れません。

目的物が譲渡された場合

例えば、請負契約の注文者が、目的物の引き渡しを受けたのち、これを売却し、その不動産を購入した第三者が目的物の瑕疵を発見した時は、どうなるのでしょうか?

請負人に瑕疵担保責任を追及できるのは、あくまでも元の注文者です。

不動産を購入した第三者は、工事をした請負人に直接、担保責任は追求できません。

注文者が瑕疵担保責任を問える理由

元の注文者しか、担保責任を追記できないのは、注文者は所有者ではなくても、請負契約の当事者だからです。

一方、目的物の瑕疵は、売買の目的物の瑕疵として、自分に対する売主の注文者に「売主としての担保責任」を追及することになります。

不動産を購入した第三者は、工事をした請負人ではなく、売主へ直接責任を追求できます。

注文者の報酬支払義務

注文者は、請負人に対して報酬を支払う義務を負います。

報酬は特約のない限りは、仕事の目的物の引渡しと引換えに支払う。すなわち後払いが原則でです。

通常の工事請負契約であれば、着手金、中間金、完成後と分割で支払う契約が多いです。

注文者の目的物受領義務

目的物の引渡しを要する請負においては、注文者は、目的物を受領する義務があります。

注文者の解除権

請負人が仕事を完成するであれば、注文者はいつでも損害を賠償して、契約を解除することができる。(641条)

(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)

請負というのは、注文者の需要に応じてする仕事です。

請負人が不利益にならなければ注文者側から解除できることで、双方が社会的に不経済にならないようにしています。

ポイント

あくまで解除は、仕事の完成に限る、完成後は認められない。

また請負人からの自由な解除は認められていません。

宅建の過去問解答:請負

今回の請負はいかがでしたか?

注文者は、瑕疵がある場合は、報酬金額の支払いを拒むことが法律で認められています。

請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の補修に代わる損害の賠償を受けるまでは、信義則に反すると認められるときを除き、報酬金額全体の支払いを拒むことができる。

(参照:【平成29年 問7-3項】過去問解説より)

本文に戻る

注文者は、仕事の完成であれば、解除もできますが、請負人からはできないことも覚えておいて下さい。

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