宅建士の過去問解説【宅建業法】宅地建物取引士の意義・設置・事務

テスト

平成26年度から、宅建士の正式名称が「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」に改められました。

今回の宅建士になるための宅建業法の過去問解説は、この宅地建物取引士制度について解説します。

ここで平成29年度に出題された過去問題です。

1)宅建建物取引士A(甲県知事登録)が、甲県から乙県に住所を変更したときは、乙県知事に対し、登録の移転の申請をすることができる。

2)宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは、物件の買受の申し込みの前であっても宅地建物取引証を提示しなければならないが、

このときに提示した場合、後日、法第35条に規定する重要事項の説明をする際は、宅地建物取引士証を提示しなくてもよい。

正解か誤りか?

「宅建建物取引士制度」の問題は、過去10年間の宅建士試験でも数多く出題されています。

宅建士をめざす人には、最重要の分野ですので、絶対に覚えてください!

宅建士の過去問解説【宅建業法】宅地建物取引士の意義・設置・事務

宅地建物取引士の意義

宅地建物取引士とは、第22条の2第1項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう(法2条4号)。

(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)

宅地建物取引士の全体構造

【宅地建物取引士の全体構造】

宅建士の過去問解説【宅建業法】宅地建物取引士の手続法の図

宅地建物取引士は、宅建士とは異なる

下記は混同しないように注意してください。

合格者 宅建士試験に合格した者

宅建士資格者

試験に合格、登録を受けた者
宅建士 宅建士証の交付を受けた者

専任

宅建士

宅建業者が事務所等ごとに設置する義務のある宅建士

宅建士の設置 ー 専任の宅建士

事務所を構え宅建業を営む業者は、専任の宅建士の設置が必要です。

事務所に必要な専任の宅建士の数

【事務所に設置が必要な専任の宅建士の数】

事務所ごと

事務所ごとに、業務に従事する者

5人に1人以上の割合

一定の案内所 少なくとも1人以上

※ 「業務に従事する者」には、営業に従事する者のほかに、一般管理事務部門の者や補助的な仕事に従事する者を含む。

【事務所に必要とされているもの】

他にも宅建業を開業するときに事務所に必要とされるものです。

・成年者である専任の宅建士の設置・報酬額の提示

・従業員名簿の備付け

・標識の掲示

※ 「専任の宅建士の設置義務のある案内所」と「案内所等の届出義務のある案内所」とは、同じ意味です。

契約等を行う案内所としない案内所の違い

営業供託義務は、どちらも無しですが、

標識の提示義務は、両方にあります。

  専任宅建士
の設置義務
営業保証金
の供託義務
クーリング
・オフ
標識の
提示義務
行政庁への
届け出
契約等を行う案内所 あり なし できない あり あり
契約等を行わない案内所 なし なし できる あり なし

未成年者は、専任の宅建士になれるか?

専任の宅建士の要件とは、

①常勤(常時常勤できる状態)と

②成年者(年齢20歳未満でも婚姻した者を含む)

よって未成年者は宅建士にはなれても、原則として専任の宅建士にはなれません。

ただし、婚姻した未成年者自らが宅建業を営むか、法人の役員であれば、専任の宅建士になれる特例があります。

※ この特例は、その事務所等に勤務しない非常勤役員や役員に含まれない政令使用人には、適用されません

監査役の兼任禁止

法人の監査役は、会社の取締役、支配人その他の使用人を兼ねることができません。

よって専任の宅建士になることはできません。

専任の宅建士の法手数が不足した場合の是正措置

専任の宅建士の数が不足したときは、宅建業者は、2週間以内に是正(補充)措置をとる必要があります。

新たに宅建士を補充すれば、是正後30日以内にその旨の変更届を提出しなければなりません。

是正措置をとらなかった場合

是正措置をとらないときは、業務停止処分になります。

ほかに100万以下の罰金に処せられます。

宅建士の法定事務とは

宅建士しか行う事ができない業務は3つあります。

これらの業務は、専任の宅建士でなくても、宅建士であれば誰でも行うことができます。

宅建士のみが行う業務

1)重要事項の説明 (法35条1項)

2)重要事項説明書(35条書面)への記名押印

3)契約成立後に交付すべき書面(37条書面)への記名押印(法37条3項)
(37条書面は、契約書のこと)

 
この他、宅建士証の提示義務があります。
 
上記1)~3)以外の事務は、宅建士以外の者でも可能です。
 
※ 37条書面に記名押印する宅建士は、35条書面に記名押印した宅建士と同じ者である必要はない
 
37、35条書面は、それぞれ違う宅建士でも記名押印はできます。

職務責任

専任の宅建士と一般の宅建士の職務責任(事務)は同一です。
 

取引一任代理等

不動産の流動化や証券化を進める目的で生まれた制度です。

国土交通大臣の認可を受けた宅建業者(認可宅建業者)が取引一任代理等を行う場合は、業務行為が一部免除されます。

契約の相手方に対しては媒介契約、重要事項の説明、居宅所等の説明及び37条書面の交付に関する行為を要しません。

宅建士まとめ:宅地建物取引士の意義・設置・事務

今回の解説は、いかがでしたか?

序文の問題の答えです。

1)誤り。

単に住所を他県に変更しただけでは、登録の移転を申請することはできない。

2)誤り。

重要事項の説明をする際には、取引関係者の請求の有無にかかわらず、必ず宅地建物取引証を提示しなければならない

(参照:【平成29年 問30項1、問37項1】過去問解説より)

登記の移転は、登録者が、登録している都道府県知事の管轄する都道府県知以外の都道府県に所在する事務所に移るときに、申請することができます。

宅建士制度:出題のポイント

・宅建士とは、法22条の2第1項の宅地建物取引証の交付を受けた者をいう。

・事務所ごとに業務に従事する者5人につき1人以上の割合で、また案内所には1人以上の専任の宅建士を設置しなければならない

専任の宅建士は、成年者であることを要する。

・専任の宅建士の法定数が不足したときは、2週間以内に是正措置(補充)をとる

是正後30日以内にその旨を届け出なければならない

・宅建士は職務に限らず、信用失墜行為が禁止されている。

・宅建士は専任であるか否かを問わず、3つの事務を行える。

1)重要事項の説明

2)重要事項説明書への記名押印

3)交付すべき書面への記名押印

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