今回は、宅建士試験の法改正の情報:2018年【宅建業法】の法改正についてお伝えします。
2018年(平成30年度)の4月1日に施行された法令の改正(6月に官報に公告)が試験の出題範囲になります。
毎年、この法改正に関連する問題は、宅建士試験で出題されやすいので、直前に過去問と一緒に学習してください。
今回の宅建試験「宅建業法」の主な法改正は3点です。
・建物状況調査(インスペクション)の説明事項
・IT技術を活用した35条重要事項の説明(貸借の場合のみ)
・空家に関する報酬額(仲介手数料)の上限の特例
Contents
建物状況調査(インスペクション)の説明事項
今まで日本人はまだ新築志向で、海外に比べると中古の市場が小さく、特に購入時の瑕疵担保責任が中古市場は購入者が不安を感じている場合が多かったです。
よって買主が不安を解消して中古物件を購入できるように定められた、消費者側のニーズに合う法令なので、試験に出る可能性が最も高いです。
建物状況調査(インスペクション)とは
まずインスペクションの意味はわかりますか?
建物状況調査(インスペクション)とは、
建物の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する部分に関する調査。構造耐力上主要な部分の調査は、建物の基礎、外壁等に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化事象、不具合事象の状況を目視、計測により行う。
国土交通大臣が定める講習を修了した建築士などの専門家が実施するもの。
購入前に不動産のプロに物件を診断してもらい、その調査内容を契約に盛り込みます。
インスペクションを実施していない場合は、「実施していない」と書面に記載しないといけません。
記載が必要な書面
インスペクションは、3つの書面に記載が必要です。
・35条(重要事項)
・37条書面
・媒介契約
【35条書面】
建物状況調査の結果の概要、建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況を重 要事項として説明(第 35 条第1項)も必要。
【37 条書面】
宅建業者は、売買(交換)等の契約当事者に交付する書面(いわゆる 37 条書面)に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を記載。
【媒介契約書面】
媒介契約書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載(第 34 条の 2第1項)
宅建業者は、媒介依頼者に交付する媒介契約書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載。
建物状況調査を実施する者のあっせんについて宅建業者は、媒介契約書に「建物状況調査を 実施する者のあっせんの有無(宅建業者があっせんするか否か)?」の記載が必要。
【注意事項】
建物状況調査の実施者のあっせんは媒介業務の一環。
宅建業者は依頼者から、 報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。
建物状況調査(インスペクション)の2つの記載事項
インスペクションには2つの記載事項があり。
1)媒介契約書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載(第34条の2第1項)
2)建物状況調査の結果の概要、建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況を重要事項として説明(第35条第1項)
【重要ポイント】
上記の1)については売買(交換)・貸借いずれも記載事項
下記の2)については、売買(交換)のみ記載事項で、貸借は記載を省略できる
35条:重要事項説明に必要、全てに記載義務が生じる場合
1)建物状況調査を実施しているかどうか?
実施している場合における建物状況調査の結果の概要
既存建物の取引(売買、交換、代理・媒介しての貸借)の場合、建物状況調査
【注意事項】
(実施後 1 年 を経過していないものに限る)を実施しているかどか、および実施している場合にはその結果の概要を説明しなければならない。
1年以上前の結果は有効にならない。
重要事項の説明対象に加えることで、契約当事者に建物状況調査の制度自体の周知や利用を 促すためだと考えられる。
1年以上前に行った建物状況調査の場合は、1年以内に建物状況調査を実施していない事になる。
その場合は 「建物状況調査を実施していない」という記載になる。
賃貸の場合:記載が省略できる(2)の内容
借りる場合はそれほど必要ないので省略される (売買・交換のみ記載が必要なもの)
2)設計図書等の建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存の状況
既存建物の売買・交換の場合、設計図書、点検記録その他の建物の建築および維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存状況の説明が必要
【国土交通省が定める事項】
イ、建築確認の申請書及び計画通知書並びに確認済証(新築時または増改時)
ロ、検査済証(新築時または増改築時)
ハ、建物状況調査結果報告書
二、建設住宅性能評価書
ホ、建築基準法第 12 条の規定による定期調査報告概要書等
へ、当該住宅が昭和 56 年 5 月 31 日以前に新築の工事に着手したものであるときは、新耐震 基準等に適合していることを証する一定の書類
※書類の「保存の状況」の説明については、原則として書類の有無を説明するもので、書類の記載内容の説明まで義務付けるものではない。
(書類があるなしの説明だけ、内容は必要ない)
この説明義務については、宅建業者が売主等(必要に応じて管理組合および管理業者)に書類の保存状況を照会し、書類の有無が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになる。
※貸借では、借主による住宅ローンの借入やリフォーム等の実施は一般に想定されないことから、設計図書等の保存の状況は重要事項の説明の対象ではない。
37条書面の記載事項について
宅建業者は、売買(交換)等の契約当事者に交付する書面(いわゆる 37 条書面)に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を記載。
【注意点】※売買(交換)のみ上記事項を記載し、貸借の場合には、記載不要
当事者の双方が確認した事項とは、専門的な第三者が行った建物状況調査等がある。
その結果の概要を重要事項として説明している場合は、原則として、その結果の概要を 37 条書面に記載する。
当事者の双方が確認した事項は「有」として書面に記載する。
それ以外は「当事者の双方が確認した事項」は「無」として書面に記載する。
記載の仕方の特例
記載方法も条件があり。
当事者の双方が 写真や告知書等をもとに既存建物の状況を客観的に確認し、
その内容を価格交渉や瑕疵担保の 免責に反映した場合等、既存建物の状況が実態的に明らかに確認されるもの。
また、それが法的にも契約の内容を構成していると考えられる場合には、当該事項を「当事者の双方が 確認した事項」として書面に記載して差し支えない。
貸借のIT技術を活用した重要事項の説明
法改正により、宅地建物の貸借の代理または媒介に係る重要事項の説明のみ、テレビ会議システム、 テレビ電話(スカイプ)等の IT を活用することが可能となった。
これによって、賃貸契約であれば、自宅で説明を受けられるようになり、利便性が向上する。
ただし、下記の一定の要件を満たす必要がある。
・宅地建物取引士は、説明を開始した後、映像を視認できない又は音声を聞き取ることができない時は、直ちに説明を中断し、当該状況が解消された後に説明を再開する。
・宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認できること。
かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができ、双方向でやりとりできる環境において実施していること。
・宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。
・重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること。
・映像及び音声の状況について、重要事項の説明を開始する前に確認していること。
・宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること。
【注意点】
※重要事項の説明に、売買や交換については IT での重説は認められていない。
社会実験で問題がない旨が確認できた(媒 介・代理しての)貸借に限られる。
空家に関する報酬額(仲介手数料)の上限の特例
今までの報酬の改正:物件価格は低いが、経費や調査料が請求できていたのが上限の規定ができる。
低廉な空家等(消費税を含まない価額が 400 万円以下の物件が対象。
交換の場合は高いほうの価額が(400 万円以下)が採用される。
通常の媒介・代理と比較して現地調査等の費用を要するものは、宅建 業者が受領できる報酬の特例として、当該現地調査等の費用に相当する額を従前の報酬額に加算することができるようになった。
その額(報酬合計額)は、18 万円+消費税相当額を超えること はできない。
簡単にいうと、400 万円以下の物件を売買する際の報酬額の上限は、「現地調査等に要する費用」 を含めて 上限が18 万円となる。
法改正前と法改正後の違い
【法改正前】
200 万円以下の物件の報酬額の上限=取引価格×5%
200 万円超 400 万円以下の物件の報酬額の上限=取引価格×4%+2 万円(消費税は別途取れる)
物件の価 額 | 消費税込の率 | 基本の率 |
---|---|---|
イ)200万円以下の部分 | 100分の5.4 | 100分の5 |
ロ)200万円を超え400万円以下の部分 | 100分の4.32 | 100分の4 |
ハ)400万円を超える部分 | 100分の3.24 | 100分の3 |
消費税の取扱い | 消費税額込みの表示 | 上記で算出した額に 消費税額(1.08倍) を乗じる |
【法改正後】
400 万円以下の物件については一律、18 万円が上限になる。
「現地 調査等に要する費用」は別途受領することはできず、「現地調査等に要する費用」も含めて18 万円になる。
300 万円の物件の売買を行い、売主から媒介の依頼を受けた場合、そして、依頼者から特別依頼があり、物件調査費用として 2 万円を交付する約束もあったとする。(消費税は別途、 受領できることとする)
法改正前は、300 万円×4%+2 万円=14 万
それに加えて、2万円の物件調査費用(合計して 16 万円)までしか受領できなかったが、
今後は、物件調査費用を含めて 18 万円まで受領できる。
上限の特例が適応される条件
・空き家等といっても空き家に限らず、400 万円以下の物件であればすべて対象。
・売主からのみ上記 18 万円の報酬を受領でき、買主からは従来の報酬額の上限になる。
(売買の代理の場合:売主は18万だが、買主は今まで通り16万円)
・媒介契約時にあらかじめ報酬額(物件調査費用を含めて 18 万円の報酬)について、売主の合 意が必要。
・依頼者である空家等の売主または空家等の交換を行う者から受領するものに限られる。
*宅建士の最新の「統計」問題を効率よく勉強する方法の記事はこちらから
参考記事:「宅建士の過去問解説「統計」48問目の覚え方のコツと過去問の傾向」
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