宅建士の過去問解説【借地権1】地上権と賃借権・借地権の存続期間

テスト

今回の宅建の過去問解説「借地権」の1回目です。

前回は「共有・区分所有権」について解説しましたが、今回は宅建業務に関係する「借地借家法」の「借地権」についてです。

(*参考記事「宅建士の過去問解説【権利関係】共有・区分所有権3。マンション管理運営に必要な基礎知識を紹介!」

「借地借家法」は、平成4年8月1日からスタートした新しい法律です。

民法は万民のための法律なので、不動産のような長期間の貸し借りのルールでは、細かい部分にはまで対応しておらず、不適応な箇所も多いです。

そこで借家人保護を目的とする「借地借家法」が作られました。

ここで、借地借家法の地上権に関する問題です。

あなたは、借りている建物の賃料を3年ごとに1%ずつ増額する契約を公正証書で定めていました。

しかし社会情勢の変化で、周囲の家賃相場は下がり、賃料は不相当です。

あなたは契約期間満了まで、賃料の増減額請求をすることができるのでしょうか?

上記の内容は、平成29年度宅建士試験で出題されました。

この「借地借家法」の分野は、毎年絶対に出題される重要な分野なので、最後まで読んでみてください。

過去問の解答を先にみる

宅建士の過去問解説【借地権1】地上権と賃借権・借地権の存続期間

宅建の過去問解説:借地権とは

借地借家法で借地権とは、

建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことである(借地借家法2条1号)

(参照:「パーフェクト宅建 基本書」より)

地上権とは物権であり、賃借権は債権で、地上権よりも弱いです。

一般的に借地借家法の方が民法よりも優先されます。

平成4年以前に契約したものは、基本的に旧法で対応します。「なお従前の例による」と定められています。

ここ10年間の宅建士試験では、出るのは新法だけで、旧借家法は出題されていません。

地上権と賃借権

建物所有を目的とするのは賃借権、地上権は物権であり土地を直接的に支配できます。

一方、賃借権は間接的に支配できるのみで、権限は弱いです。

地上権は登記ができます。

そして地主は登記に協力する義務があります。

一方賃借権は、地主には協力義務はありません。

よって、借り手の立場が弱くなることから、借地借家法では、両者の権能の差を少なくして、賃借人を保護することを目的にしています。

地上権と賃借権が適応できるのは、あくまで建物所有の場合です。

それ以外の目的、例えば、ガソリンスタンド、材料置き場、駐車場などの土地賃借権は、対象にはならないです。

住宅を所有する場合と考えるのが一般的です。

借地権の存続期間(契約期間)

定期借地権以外の普通借地権の場合

期間

・当初の存続期間は一律に30年

・1日目の更新期間:20年

・2回目以降:10年

期間を短く定めても無効になります。

一方、民法で定める賃借権は20年になります。

旧借地法では、建物の構造によって存続期間が決まられていましたが、新法では建物の構造などの強さは関係ありません。

木造も鉄骨造も同じ存続期間になります。

また借地契約の存続期間中に建物は滅失しても、借地権は消滅しません。

滅失の原因が借地人の失火であっても同様です。

借地契約の更新

当事者が合意することにより、契約を更新できます。

借地人を保護するための法律なので、借地上に建物がある場合に限り更新を請求することができます。

契約は自動で更新できます。

もし地主が、契約を解除する場合は、正当事由がなければなりません。

借地権の期間満了した後でも 土地の使用を継続するときも、建物がある限りは、これと同じです。

また、契約完了時に特約で「地主が立退料を支払う場合は、賃借契約の更新を拒絶できる」などは認められていません。

基本的に借りている人に不利な特約は、無効になります。

契約更新拒絶の要件

借地人の更新請求や使用継続に対する借地権設定者(多くは土地所有者)の異議は、「正当事由」がなければ述べることができない。

正当事由が考慮される4つの要件

借地借家法では、正当事由を明確にして、以下の4項目が正当事由の考慮要素としています。

・土地を使用する事情

・借地に関する従前の経過

・土地の利用状況

・財産上の給付を支給する申し出をしてきたとき

借地権の対抗力

自分の借地権は主張できます。

借地権に対抗力があるということは、第三者(他人)に自分の借地権を主張できることになります。

借地権の登記

もし、A名義で「建物」を登記をしているとき 名義はA本人である必要があります。

たとえ地上権や賃借権がない場合でも、土地の借地権を第三者Cへ対抗することができますが

本人以外の登記は無効です。

建物の登記名義人が借地権者の妻や長男の場合でも、対抗力はありません。

建物滅失の場合の対抗力の保持

もし建物が滅失した場合は、土地の上の見やすい場所に明示し、2年間以内に再築すれば、対抗力を保持できます。

自己借地権とは

自分の土地に自らの借地権者として設定することです。

例えば、自分の土地に建てられたマンションを地主が買うような場合です。

このように所有権以外の権利は、原則として消滅することを混同の法理といいます。

借地条件の変更

借地条件は、変更することができます。

もし、当事者間で条件変更によって協議がまとまらないときは、裁判所が借地権者の申立てにより、借地条件を変更することができます。

増改築の許可

増改築を制限するという借地条件がある場合、当事者間で協議が調わないときは、

裁判所借地権者の申立てにより、承諾に代わる許可を与えることもできます。

建物が滅失した場合の再築及び解約申入れ

借地権の存続期間が終了する滅失(取壊しも含む)した場合、借地権者は残存期間を超えて存続するような建物でも再築することができます。

しかし、借地権設定者が2ヶ月以内に異議を述べれば、借地権は契約期間で終わります。

もし、2ヶ月以内に異議を述べない場合は、承諾があった日、または建物再築の日のいずれか早い日から20年間契約が延長されます。

ここでのポイントは、滅失の時期が、借地権の契約期間中か、更新したかによって再築できるかどうか?が変わることです。

表のまとめ

  最初の契約期間中に建物が滅失 契約を1回でも更新した後に、建物が滅失
借家人から地主へ再築の申出通知 地主から返事がなければ、承諾した
ことになる⇒再築OK
地主の承諾がない限りは、再築できない。
地主の承諾あり

「承諾日」または建物の「再築日」の
いずれか早い方の日から、20年間

借地権が延長

同じ
地主の承諾なし

契約期間満了まで、借地権は存続する

* その後更新するかどうかは、その時の状況に応じて当事者が決める

建物が再築された場合、地主「借地契約の解除申入れ」ができる

解約申入れから3ヶ月後に、借地契約は終了する。

裁判所の許可を得ない場合

借地権設定者は、地上権の消滅請求または、土地賃貸借契約の解約申入れをすることができます。

この場合は、その請求または、解約申入れの日から3ヶ月を経過すれば借地権は消滅します。

宅建の過去問解答:地上権1

借地借家法の借地権の内容は、いかがでしたか?

序文の問題、家賃の増減額の交渉は契約期間の途中でも可能かどうか?についての答えは、

正解です! 家賃交渉はできます。

地代又は土地の借賃(以下、地代を言う)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、

契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合は、その定めに従う。

(参照:【平成29年 問11項3】過去問解説より)

本文の解説に戻る

宅建士試験には、下記のポイントも出題されるので、覚えて下さい。

・借地権とは、建物所有を目的とする地上権土地賃借権を総称していう。

・借地権の存続期間、当初30年、1回目更新20年、2回目以降10年

これより短い期間は無効、これよりも長ければ、その期間になる

・借地権の対抗要件は、借地権の登記か、借地上の建物の登記

次の「借地権」の2回目は、「定期借地権」や「建物買取請求権」について解説します。

これらも宅建士試験に毎年出題される重大箇所なので、ぜひ読んでみてください。

* 参考記事「宅建士の過去問解説【権利関係】借地権2。賃借人に土地を無断で別人に転貸された場合は?」

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